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「やっぱり野球を」決意した女子選手 疲労も達成感に

2021年7月12日15時15分 朝日新聞デジタル

 梅雨空に上がった飛球を見上げていた。

 捕れないかも。そう思いながら落ちる位置へ駆け出す。打球をうまくキャッチする自分の姿が浮かぶ。イメージ通りに捕れた時が一番気持ちいい。

 この感覚は他のスポーツでは味わえなかった。だから野球を続けてきたんだ――。

 水海道一(茨城)の3年生、片野令菜さんは、小学5年で野球に出会った。

 少年野球チームに誘われた4歳下の弟について行った。投げる、捕る、打つ、バント。「野球って、こんなにやることがあるのか」

 興味を持つと、なんでもチャレンジしてみないと気が済まない性格。初めてのキャッチボールで、肩の強さを褒められたのがうれしくて、入団を決めた。

 中学も野球部で選んだ。学区外だが、より強いところに入りたかった。3年間、野球に明け暮れた。

    ◎  ◎    

 高校進学を前にすると迷いも出た。女子野球部がある県外の学校に進むことも考えたが、経済的に難しかった。練習拠点が自宅に近く、社会人も所属する女子野球チームに入り、野球は週末にやろう。高校では陸上部に入ろう。そう考えた。

 中3の3月、高校の入学説明会で「野球部出身の人は体育館に集まって」と先生が呼びかけていたが、行かなかった。

 その帰り道。中学の野球部仲間で、同じく水海道一に進む同級生から電話がかかってきた。「片野の分、もらってきたよ」。体験入部の資料が自分の分も用意されていたのだという。

 また迷った。陸上部の先生に体験入部に呼ばれ、やり投げを勧められた。

 慣れないやりを手にしていると、野球部員のかけ声が聞こえる。反射的に視線を向けてしまう。「やっぱり、野球がやりたいな」

 心は決まった。

    ◎  ◎    

 入部以来、男子部員と全く同じ練習メニューをこなしてきた。

 好きな練習がある。アメリカンノックと呼ばれる。外野を走りながらフライを捕球する。何度も走り回るので50球も受けると立てなくなる。「自分を追い込むのが好き。疲労も、達成感に変わりました」

 体力差や筋力の差を感じることもあるが、外野からホームに向かって投げる遠投は、それを気にしなくて済む。一度バウンドさせることを前提に投げるため、必要なのは筋力よりもコントロールだからだ。「遠くの的だと、なぜかいいところに行くんです」

 卒業後は、社会人もいる女子野球チームで野球を続けたい。「今の練習も自分の成長につながっていると思える。まずは勉強して、進学しないといけないけれど」。照れくさそうに笑った。

 女子部員は公式戦には出られない。この夏は、スタンドから仲間を見つめる。

 相手チームの飛球が大きな弧を描き、味方のグラブに収まるシーンを想像してみる。三塁走者がタッチアップして、ホームへと駆け出す。まだアウトにできる――。

 自分と同じ、外野手に向かって心の中で叫ぶ。

 全力で、投げろ。(伊藤良渓)

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