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部員1人、負ければ休部 「HR打った」語り草作りたい

2021年7月10日15時15分 朝日新聞デジタル

 田んぼに囲まれたグラウンドに金属バットの音が響く。飛んでいく白球の先には誰もいない。

 トスされた球を次々に振り抜いていくのは、岩手・水沢農高3年の葛西頼輝(らいき)君。高橋康博監督(50)と2人だけの練習が始まって、7月で1年近くになる。

 入学時、身長173センチ、体重80キロあり、恵まれた体格から、ボクシング部など、ほかの運動部からも誘われた。でも、中学から続けてきた野球以外、見向きもしなかった。

 そのとき、先輩部員はマネジャーを含め、3年2人と2年3人。それが昨春はコロナ禍で新入生を勧誘できず、部員は3年3人と2年の自分を合わせ、4人に減った。

 夏の独自大会初戦。前沢と北上翔南の連合チームの5番レフトで出場した。

 「先輩のために打ってやる」。初回にまわってきた好機も直球に押され、レフトフライ。次の打席も三振に終わった。

 チームは失策が続き、五回コールドで敗れた。

 「来年の夏は俺らができなかった分、勝利を勝ち取ってくれ」

 中学から一緒にやってきた当時3年の坂本雄大君に、そう声をかけられた。

 「任せてくださいよ」

 笑顔で返したものの、自分1人になる不安でいっぱいだった。

 春になると、野球経験があると聞いた新入生に、入部するよう片っ端から声をかけた。だが、誰も首を縦に振らなかった。

 同じころ、連合チームでの練習試合前に菅原正幸部長(55)から呼び出された。打撃の調子が上がらず、周りが見えなくなっていたときだった。

 「何のために野球をやっているか、分かるか」

 少し考え、答えた。

 「勝つためです」

 「負けたら意味はないのか」。そう返され、答えに窮した。

 「負けたとしても、最後まで自分がやり切ったと思えたら、最高の思い出になるんじゃないか」

 ハッとした。

 打席に立てば、部員が多いか少ないかは関係ない。1対1の勝負だ。

 「最後の夏でヒットを打てたら最高だ」。夏の大会は1年の時から出ているが、1本も打てていない。練習に熱が入った。

 監督や部長がいれば、トスを上げてもらい、1日300本以上振り込んだ。1人のときは、ひたすら走り、ラダートレーニングをして、下半身を鍛えた。

 「1人でやって、何になるんだろう」

 悩んだとき、同級生がキャッチボールの相手をしてくれた。野球経験のある先生が打撃のコツを教えてくれたこともある。

 岩手大会では、岩谷堂、前沢、北上翔南との四校連合で出場する。夏が終われば、水沢農高野球部は休部になる。

 「水農の野球部員は1人でも頑張って、ホームランを打ったんだぞ」

 ちょっとした語り草にならないかな――。そんなことを思い描いている。(西晃奈)

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