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絶妙指示で勝利、記事もたたえた 難病抱えるマネジャー

2021年7月11日16時15分

 自分がいなかったら、このチームはどうなるんだろう。いなくても何も変わらないかもしれない。俺、ほんとにチームに必要なのかな……。

 コロナ禍で部活動ができなかった昨年12月~今年3月、川口市立(埼玉)のマネジャー篠田健心(3年)は時折、不安でたまらなくなった。1人で考える時間がありすぎたからだ。

 生まれた時から心臓に疾患がある。「修正大血管転位症」という左右の心室が入れ替わっている難病で、不整脈などとの合併症があり激しい運動ができない。小学生の時は長距離走などを避けつつクラブチームで野球をしていたが、中学2年でやめた。代わりに所属した卓球のクラブチームは楽しかった。「もう野球はいいかな」。高校入学後すぐの仮入部期間も当然のように卓球部に入った。

 仮入部期間中、体育館掃除をしている時、たまたま野球部監督の鈴木久幹(57)に声をかけられた。雑談から自分が野球をしていたことや自分の病気のことを知った鈴木に、「野球にはもう興味ないか?マネジャーをやってみないか?」と誘われた。

 心が揺れた。もう一度野球にかかわってみたいと思う自分に驚いた。悩みに悩んだ末、野球部に入り、マネジャーになった。公式戦でダブルスを組むことが決まっていた卓球部の仲間には、泣いて謝った。

     ◎      

 練習では主将と共に指示を出す。ノックを打ち、打撃投手を務め、選手のスイングの動画も撮る。試合が近づくと、相手校の情報集め。試合中は相手投手や打者の癖を見抜き、具体的な対策を指南する。

 忘れられない試合がある。2年前の秋季県大会の春日部共栄戦だ。篠田はベンチに入り分析・助言をした。「この投手は追い込まれると○○でくる」「○○方向の打球が多いぞ」。攻め方や守備位置などの的確なアドバイスが光り、チームは2―1で勝利。33年ぶりの準決勝進出を決めた。「事前に調べたことが全部生きた」。選手の動かし方一つで試合の流れがガラッと変わることを学んだ。

 後日、部長の大谷豊(38)から「これ、お前のことだぞ」と、ある記事を見せられた。「外野手のポジショニングが絶妙」と書かれていた。指示を出したのは篠田だった。「裏方の働きも、ちゃんと見てくれている人がいる」。大きな自信になった。

     ◎      

 打球が弧を描きスタンドに吸い込まれていくのを見送るとき。ノックで選手が飛び込んで捕球するとき。「いいなあ……自分もプレーしたいな」と、もちろん思う。でも「自分には自分の役割がある」と、あの試合のおかげで思えるようになった。部活休止期間につらくなったのも、「分析や対策を考えても発揮する場がなかった」からだった。

 篠田の手元にある「分析ノート」には、自チームとライバル校の特徴や対策がびっしり書かれている。「すごいのは自分じゃなくてプレーする選手」と言いながらも、分析にはますます力が入る。12日、三郷との夏の埼玉大会初戦はスコアラーとしてベンチに入る。川口市立の夏は、篠田が差配する。(敬称略)

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