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通学2時間、兄弟で野球部へ がんを患う母のためにも 盛岡四高

2021年7月7日17時15分

朝日新聞DIGITAL

 午前4時半、6月下旬の空はもう白んでいる。

 岩手・盛岡四高3年の尾崎睦(むつみ)君は、母・恵梨さん(43)の声で跳び起きる。朝食のご飯はいつもお代わり。納豆とみそ汁、肉や野菜のおかずもかき込む。

 「行くぞ」

 まだ眠そうな同校1年の弟、暖(あつし)君をせかし、母の車で駅に向かい、始発列車に乗り込む。

 岩手県一戸町にある自宅から学校まで2時間弱かかる。睦君は来春の受験に向け、教科書を開く。弟は少し離れた席で舟をこいでいる。

 野球部の朝の自主練習は1時間ほど。試合前は放課後の練習が延び、帰宅が午後10時を回ることが多い。

 入学時は学校近くに下宿することも考えた。

 だが、幼い妹を抱え、甲状腺がんを患いながらフルタイムで働く母は、自分を頼りにしている。経済的な事情もあって、自宅通学を選んだ。

     ◎

 盛岡四高の試合を見たのは中学3年の秋。私立の強豪校に大きくリードされているのに、ベンチには勝っているかのような笑顔と掛け声があふれていた。

 「こんなに楽しく野球をできるんだ」

 この学校に行きたいと伝えると、両親から「遠くて大変だよ」と何度も言われた。それでも思いは揺るがなかった。

 野球部には、中学で選抜チームに選ばれたほどの仲間もいる。追いつこうと朝の自主練習を始めた。体を作るため、休み時間に毎日おにぎりを8個食べた。2年になるころには体重が10キロ増え、打球の飛距離も伸びはじめた。

 だが増えた練習量に、中学から違和感のあった右ひじが悲鳴を上げる。

 昨年5月の練習試合。レフトからホームへ返球したとき、鋭い痛みが走った。軟骨がはがれ落ちるけがで、右ひざの軟骨を右ひじに移植する手術を受けた。

 「自由に野球できるまで半年かかるよ」。医師からそう告げられた。

 上達していく仲間を見て焦りが募る。夏の独自大会はスタンドから見守った。毎日送り迎えしてくれる母に申し訳なくもあった。

 それでも腐らず、試合ではスコアを付け、率先して声を出した。そんな姿勢が認められ、新チームでは副主将に選ばれた。

     ◎

 そして今春、暖君が盛岡四高に合格し、野球部に入ってきた。

 暖君は2年前の夏、岩手大会の応援に行き、兄のいる盛岡四高が、佐々木朗希投手擁する大船渡高と激戦を繰り広げたのを見て、兄と同じ高校で野球をすることを心に決めていた。

 「弟の前で情けない姿を見せられない」。睦君は奮い立った。

 6月30日にあったメンバー発表で睦君は背番号7をもらった。夏の大会で初めてグラウンドに立てる。

 あるとき、大きな負担をかけていることを母にわびたことがある。「元気にプレーしている姿が見られれば、それで十分だよ」。ほほえんで返してくれた母の言葉に支えられてきた。

 「大好きな野球を笑顔でやり抜くところを見せたい。自分で決めた道だから」(西晃奈)

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