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かつての選抜出場校、今は5校連合 部員は10分の1に

2021年7月13日17時15分 朝日新聞デジタル

 《久々に釣りに行く》

 室戸(高知)の百田愛永君(3年)が下宿先でLINEのメッセージを送った。

 《行け行け》

 返信したのは宿毛(高知)の中川祐大君(3年)。2人は1年秋の県大会で連合チームを組んで以来、野球はもちろん、趣味の釣りの話もする仲だ。

 室戸は高知県の南東端、宿毛は南西端にある。直線距離で140キロあり、車で土佐湾沿いを210キロ余り走って4時間ほどかかる。そんな両校と、高知市中心部の高知丸の内、宿毛と同じ県南西部の幡多農と清水を含む計5校が高知大会で連合チームを組む。

 百田君と中川君がLINEのやり取りをした6月のこの日、5校の初顔合わせが高知市内であるはずだったが、新型コロナウイルスの感染拡大で中止に。初の練習試合も流れた。

 室戸の部員は現在6人。創部73年の歴史があり、60人超の部員を擁した時期もあった。2007年の選抜大会では強豪の報徳学園(兵庫)を破る快進撃で、8強入り。地元は熱狂に包まれた。

 学校近くでスポーツ店を営む亀井司郎さん(66)は「40台もの大型バスで甲子園に駆けつけた。室高(むろこう)は地元の誇りだった」と懐かしむ。しかし、主産業の漁業は衰退。過疎化にはあらがえず、市の人口は当時から3割ほど減って1万2千人ほどになった。鉄道などの公共交通機関に乏しく、遠方からの通学は期待できない。07年の選抜大会後に相次いだ不祥事も響いた。

 17年の99回大会から高知大会で連合チームでの出場を続ける。「室高の名前で試合に出させたいけど、野球をする場を守ることだけで精いっぱい」。柴原享一監督(59)の表情はさえない。

 室戸には、わずかな部員には広大すぎる8千平方メートルのグラウンドがあるが、9人が守備位置につく実戦練習はできない。それでも百田君は遊撃手、投手とポジションを転々としながら、笑みを絶やさない。「人数が少ない方がたくさん練習ができて楽しい」

 連合チームの5校の選手がそろって練習できるのは、大会直前の7月の週末のみ。平日は各校で基礎練習し、戦術やサインはオンラインでつないで確認する。

 百田君は「連合チームは、その時限り。だから後悔しないプレーをしたい」。

 初戦の相手は伊野商。1985年の選抜大会を制した古豪もまた、今年は部員12人の小所帯だという。

     ◎

 単独校での出場を目指し、「9人目の選手」の確保に総力を挙げる学校もある。

 5月中旬、穴吹(徳島)の鵜飼翔太君(3年)は焦っていた。部員は8人。女子マネジャーに外野守備位置に立ってもらって実戦練習を続けているが、このままでは「穴吹」の名で大会に出られない。

 「助っ人で来てくれへん?」。昼休みに幼なじみの三上顕(さんじょうあきら)君(3年)に声をかけた。小学校で野球を始めた三上君は、中学1年の冬に発症したアレルギー反応が原因で、食後2時間以内の運動ができなくなった。

 高校でも部活はしていない。もちろん鵜飼君も事情は知っている。三上君にとって思いがけない申し出だった。

 「ちょっと考えさせて」。即答はできなかったが、症状は治まりつつある。両親にも相談し、食後の時間に気をつけることを条件に加わった。

 初めての硬式球に苦戦し、脚をアザだらけにしながら汗にまみれ、6月の練習試合では初安打を放った。

 「小学5年の初めての試合でヒットを打った時のことを思い出した。もう一度野球をやれるとは思っていなかった。少しでも長くみんなと野球をやりたい」と三上君は喜ぶ。

 さらに、県内屈指の強豪のレスリング部からも2人の「助っ人」を得た。急ごしらえの11人で大会に挑む。

 鵜飼君は「心強い仲間と一緒に野球ができて感謝している。高校最後の夏を全力で戦う」と意気込んでいる。(羽賀和紀、吉田博行)

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