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科学的根拠が近づけた甲子園 こだわりは白球使わぬ練習

2021年7月1日15時38分

 高校野球は進化を続けています。球児や指導者が野球の魅力を深化させる試みも見られます。一方で少子化に直面し、その真価が問われています。103回目の夏の選手権を控え、四国を舞台に高校野球の「シンカ」を追います。

 1人3合はあるだろうか。大きなおむすびにかじりつき、プラスチック容器に入った白飯をかき込む。藤井(香川)の練習は食事から始まる。

 「腹が減った状態で練習しないため。空腹だと、エネルギーを出すために筋肉が分解されてしまう」。小林大悟監督(45)は狙いを説明する。

 単純に体を大きくするためではない。科学的根拠をもとに、「身長(センチ)―100=体重(キロ)」を目標とし、筋肉を成長させるたんぱく質の1日の摂取量(グラム)は「体重(キロ)×2」を目指す。

 選手たちは練習の合間にも食べ、1日平均5回の食事でエネルギーとたんぱく質を補う。体重から脂肪の量を差し引いた「除脂肪体重」の指標にも着目。これがスイングスピードに比例するという。60キロが最低目標だ。

 体作りを徹底する背景には、逆転の発想がある。

 15年前に赴任した小林監督は、右翼側に体育館があって狭いグラウンドなど練習環境を言い訳にせず、ボールを使った練習を減らした。6年前には付属中学の野球部が発足し、中高6年間で一貫した体力作りができるようになった。「8歳から12歳で柔軟性が伸び、15歳から20歳で筋力が大きく上がる」

 小林監督は丸亀(香川)から静岡大で外野手としてプレーした。卒業後、丸亀に戻って1年間コーチを務めた後に渡米。独立リーグで2年間、本場の「ベースボール」を学んだ。米国の選手のグラブさばきやバットコントロールを目の当たりにし、日本人とは筋力とスピードに決定的な違いがあると感じた。

 帰国後に個人トレーナーの資格を取得。「実績や歴史がないところで自分が学んできたことを試したかった」。29歳で藤井の監督になり、データに基づく身体能力向上に着手した。

 その理念はようやく結実しつつある。藤井は今春の県大会で準優勝し、初めて四国地区大会に出場した。

 3年生の主力の多くは中学野球部の「1期生」。主将の朝田耕司君(3年)は当初、ボールを使わない練習の多さに戸惑った。それでも目標を少しずつクリアし、中学3年間で50メートル走では7秒台後半から6秒台中盤まで上昇。チームとしても全国大会8強入りした。「不安は自信に変わっていった」と話す。

 甲子園出場も遠い夢ではなくなったと感じる。「香川大会で優勝し、自分たちの6年間を証明したい」

     ◎

 「ほら青春は今しかないぞ。出し切れ~」

 6月中旬、東温(愛媛)のグラウンドに、フリートレーナーの高須賀潤さん(50)の声が響く。

 選手たちはネットの間に張ったゴムひもを跳び越えていく。スクワットジャンプ。素早く関節を曲げ伸ばし、下半身に加え、腹筋や体幹も同時に鍛え上げる。効果を高め、けがのリスクを抑えるためにトレーナーの存在は貴重だ。

 高須賀さんは愛媛を拠点に複数の公立校を指導しており、東温には週1回訪れ、トレーニングのほか、けが予防のストレッチを指導する。堀内準一監督(54)は「餅は餅屋。高須賀さんのおかげで、こちらは技術や戦術の指導に集中できる。心強いです」。

 エースの岩川慎之介君(3年)は「トレーニングの意味を話してくれて、モチベーションを高くできた」と信頼を寄せる。以前は打たせて取るタイプだったが、タイヤを引き、重りを持った状態でスクワットをして下半身を強化したことで球威が増し、「三振も取れるようになってきた」と成果を実感している。

 東温野球部OBの高須賀さんは、社会人野球を経て、トレーナーになった。長女が少年団でバレーボールを始めようと見学したチームの指導者が選手を怒鳴りつけている場面を目にしたのがきっかけになったという。「昭和的な空気を変えたいと思った」

 母校での指導は10年ほどになる。強豪校のようなトレーニング器具はないが、創意工夫で深化させる。「もちろん器具があれば手っ取り早いけれど、そこを工夫するのがトレーナーの仕事です」(谷瞳児、照井琢見)

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