大阪桐蔭の主将、九回1死に同点HR 西谷監督も大興奮
(31日、高校野球大阪大会準決勝 大阪桐蔭12―10関大北陽)
主将の意地だった。
あとアウト二つで敗退が決まる九回1死。大阪桐蔭の池田陵真は、口を真一文字に結んで右打席へ向かった。「いまこそ桐蔭の本物の力を示すときだと思った」。3球目。内角の速球をひっぱたくと、打球は100メートル先の左翼フェンスを越え、芝生席で弾んだ。
起死回生の同点本塁打。ベースを1周すると、いつもは冷静な西谷浩一監督が、とびっきりの笑顔で待っていた。「さすが。やってくれると信じていた。抱きしめようと思ったけど、まだ早いかなと思ってやめました」。百戦錬磨の監督も大興奮するほどの一打で、チームは息を吹き返した。
延長戦に持ち込むと、十三回から突入したタイブレークで十四回に5点を奪って突き放した。大会前に、無死一、二塁から始まるタイブレークを想定した練習を繰り返していたことが、ここ一番で生きた。
前回、全国制覇した2018年も北大阪大会準決勝の履正社戦で、九回2死からの逆転劇だった。その試合を中学3年だった池田は、球場のスタンドで観戦していたという。
「これが桐蔭の強さか。これが本物の強さなのか」と。手に汗を握り、前のめりになってその光景を見つめた。
あれから3年。今春の選抜大会で1回戦敗退したチームは、「本気で日本一」を掲げて夏に向けて練習を積んできた。だが、大阪大会前に池田は不振に陥る。7月3日の高知との練習試合では、5打席連続三振。「原因がわからない」と首をかしげ、珍しく弱気にもなった。
それでも、「練習するしかない。僕が先頭に立ってやらないと」と、誰よりもバットを振って邪念を払った。
迎えた今大会は、ここまで全試合で安打を放ち、打率は7割に迫る。この日、3時間15分の激戦を終え、言った。「もっともっと打ちたい。中3の、あの時に見たチームに近づきたいので」。目標は、ただ一つ。まだ、負けるわけにはいかない。(山口裕起)