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最速138キロの両投げ投手 プロ目指す球児、どう指導

2021年7月13日17時15分 朝日新聞デジタル

 吉野川の中流にほど近い阿波(徳島)のグラウンドで6月上旬、鳴川真一監督(45)が副主将の竹内誠悟君(3年)に打順の相談を持ちかけた。県高校総体ブロック大会の2回戦を翌日に控えていた。

 「3番はどうする?」

 「やっぱり大塚です」

 試合当日の先発メンバーは、普段7番を打つ大塚隼人(はやと)君(3年)の打順が、竹内君の提案通り、3番になった。

 変更が功を奏する。大塚君は一回に先制打、同点の九回には勝ち越しの犠飛を放ち、春の県大会4強の脇町を破る立役者になった。大塚君の3番起用について、投手でもある竹内君は「紅白戦でどこに投げても打たれ、一番嫌なバッター」。練習での経験に基づく判断だった。

 心の機微も見逃さない。さらに翌日の池田戦。脇町戦で4番で無安打だった吉岡陽輝君(3年)の3番起用を監督に進言した。「3番任すけん、今日は打ってくれ」。吉岡君は3安打5打点と奮起し、コールド勝ちを収めた。「打順を落とされるはずが、逆に3番を任され、励みになった。竹内は部員の気持ちに寄り添って考えてくれる」。竹内君は「部員のモチベーションを考えながら打順を組むので気を使うけど、試合でうまくいった時はうれしい」と笑顔を見せた。

 打撃の好不調や心理状態だけでなく、普段は打順が上位の打者を下位に置いて相手の油断を誘うことも計算する。

 「竹内は野球の駆け引きを知っている」。鳴川監督は昨秋、新チームの副主将に就いた竹内君に打順を一任。21年目の監督生活で初めて打順を選手にゆだね、日々の練習メニューも主将の近藤大伸(ひろのぶ)君(3年)ら部員たちに考えさせている。「自分で考えて、うまくいけば楽しいし、うまくいかなければ悔しい。その経験が世の中に出ても、きっと彼らの役に立つ」。選手自ら考える野球が力を引き出し、人生の糧になると考える。

     ◎

 型破りなスタイルを志す生徒に対し、どう振る舞うか。指導者は日々試されている。

 土佐塾(高知)のエース寺田啓悟君(3年)は「両投げ」の投手だ。愛用のグラブは、左右どちらの手も入る6本指仕様。左腕と右腕の練習をするため、キャッチボールは他の部員より5分ほど長い。

 小学生の頃から左右両投げを貫いてきた。「日によって左右のバランスが違うので苦労はあるが、両投げ投手としてプロに行きたいのでスタイルは変えない」

 右腕としては最速138キロを誇り、変化球も多彩。一方の左腕は120キロ余り。制球が乱れることもあり、白壁大輔監督も「今のままなら左は通用しない」と、「ダメ出し」をした。

 それでも寺田君との話し合いを重ねた末に、両投げへの思いを尊重することにした。「昔なら型にはめて指導したかもしれない」と白壁監督は振りかえる。

 大学を出てから、中学と高校で軟式野球を教えてきた。「俺についてこい」とチームを率い、失敗した選手に「そんなので勝てると思っているのか」と叱りつけた。「監督は選手が乗り越えるべき壁」。選手の頃から信じて疑わなかった。

 それが土佐塾の選手を見ていて、考えが変わった。「みんな野球が好き。勝ちたい気持ちは誰でも同じ。でも全員がプロを目指すわけじゃない」。選手の判断に任せてみることにした。

 それでも、厳しい指導を続ける強豪校を見ると、複雑な思いも抱く。「心のどこかでは、生徒たちをガンガン引っ張る指導者になりたいという思いもある」

 あるべき高校野球の指導方法とは。模索は続く。(吉田博行、羽賀和紀)

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