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野球部初の女子選手、兄に背中押され 貫こう「私は私」

2021年7月13日17時15分 朝日新聞デジタル

 「1球目!」

 ノックの打球が放たれるたび、神戸学院大付属高校(神戸市中央区)の選手約80人がいっせいに声を張り上げる。

 高くて通る声がひとつ交じる。声の主のヘルメットからは、結んだ髪がのぞく。

 鬼沢(おにざわ)日和(ひより)さん(1年)。コンプレックスで、隠そうとした声。だけど、今は気にならない。これが私と気づいたから。

     ◎

 3歳上の兄が、リトルリーグの捕手だった。どんな球も受け止める姿が、かっこよかった。

 同じ硬式のチームに入りたかった。周囲は「女子が硬式野球は危ない」。心配してくれたのはわかるけど、「危ないのは男子も一緒やん」。腑(ふ)に落ちなかった。

 小学4年で入ったのは、軟式のチーム。なのに雑音は続く。「女子が野球やってるのは、おかしい」「野球やってるって、男なん?」

 チームメートも、私も、まだ幼かった。遠慮のない言葉が刺さった。

 レギュラーではなかったが、小5でキャプテンに。いっそう言葉がとがった。「何で女子がキャプテンなん?」「俺らが弱そうにみえるやん」

 当時は「男子=強い」と思い込んでいた。

 「なめられたくなかった」。身にまとったのは兄のお下がり。ジャージーのズボンに、スポーツブランドのTシャツ、迷彩柄のジャケット……。

 男子っぽい私であろうとした。女子っぽい服を着たい私には、フタをした。

     ◎

 そして中学。両親にも熱意が伝わって、男子もいる硬式のチームへ。

 少し勝手が違ったのは、中学の制服がスカートだったこと。

 着てみると、悪くなかった。周りの女子と同じ服を着ているのがうれしかった。「『男子のスポーツ・野球』をしている私」を守ってくれるような。学校のある平日は女子、練習のある土日は野球選手。うまく使い分けられる気もした。

 女子選手だけが集まる別のチームで、その考えが180度変わった。

 メイクをして、はやりの服を着てグラウンドに来る先輩たち。かわいかった。ユニホームを着ると、かっこよかった。

 「女の子であり、野球選手。これで良いんだ」。使い分ける必要なんてなかった。

 中2になって、先輩と後輩に女子2人がいるチームに入り直した。

 監督が「女子だからといって容赦せえへん」と言ってくれるチーム。選手同士にも遠慮がなく、互いのプレーの良いところ、悪いところを言い合えた。

 周りの男子は、声変わりの年頃。低音になっていくかけ声の中で、高音の声がより目立った。嫌だった。意識して低い声を出した。

 チームメートは言ってくれた。「日和の声、高く通ってええなあ」。男子の中で、目立ってもいいんだと思えた。

     ◎

 いざ高校。

 選択肢は二つ。女子とプレーするか、男子とプレーするか。

 女子野球部がある高校で、女子同士の競争に勝てば、公式戦に出られる。

 だけど、高校野球と言えば、私の中では甲子園球場でのあの大会だった。

 中3の春の食卓。神戸学院大付属高校のキャプテンだった兄に言ってみた。「『学院』で野球やりたい」

 兄にとっては想定内だったのか、すんなり背中を押してくれた。

 だけど――。男子とは体力差が広がっていく時期。肩も弱く、力も弱い私が、3年間やっていけるのか。

 「でも、女子やで」。恐る恐る不安をぶつけた。

 「何の関係があんねん。野球に男子も女子も関係あらへん」

 淡々とした兄の言葉。私がハッとしたことに、兄は気づいていなかったみたいだけれど。

 ずっと男子の中でプレーしてきた。小学校でも、中学校でも。「これまでと同じことやん。何、ビビってたんやろ」

 「男子の中で野球をやってきた私」を貫いてみよう。創部6年目の神戸学院大付で、初の女子選手になった。

 「野球部です」と学校で言うと、まだまだ「マネジャー?」と聞かれる。

 「『マネジャー=女子』じゃないし、『選手=男子』じゃないよって、その度に説明するんです」

 相手はたいてい驚く。その反応を見るのも楽しくなってきた。

 二塁手として日々練習する。今のルールでは公式戦に出られない。でも一人の選手として、甲子園をめざすチームと一緒に白球を追うことに意味がある。それが私だから。

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