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「男女関係ない」 同じ練習、白球追った2人の女子選手

2021年6月30日09時00分 朝日新聞デジタル

 【大分】今春、こんがりと日焼けした女子生徒2人が、別府鶴見丘野球部監督に就任した佐藤直樹監督(54)に真剣なまなざしを向けて訴えた。「今まで通り、男子と同じ練習でお願いします」

 3年の竹雅莉奈、広岡桃花の両選手。ともに1年から選手として野球部に所属している。佐藤監督は、2人の練習を見守った。「3日間練習を見て、すぐに分かった。この子たちを男子と区別してはいけない、と」

 2人とも、入学当初はマネジャーとして入部を希望していたという。だが、当時の三重野和人監督(現・宇佐野球部副部長)は2人の経歴を知って、言った。「野球経験があるなら、選手としてやってみないか」。竹雅さんは「高校では体力面、技術面でも男子との差がかなりある。選手として入部するつもりはなかった。正直、驚いた」と振り返る。

 竹雅さんは、2人の兄の影響で小学1年から野球チームに所属。投手や三塁手を務め、野球に魅了されたという。中学では陸上部で砲丸投げに打ち込み、複数の高校から声がかかっていたが、大好きな野球にかかわりたくて、3歳年上の兄が野球部主将を務めた別府鶴見丘に進学した。

 三重野前監督は、そうしたいきさつを竹雅さんの兄から聞いて知っていた。話し合いは1時間を超えた。竹雅さんは素直な胸の内を泣きながら訴えたという。

 「男子に交じってやっていたら、周囲からどう見られるか心配」「ついていけずに途中で辞めたら、なんて言われるのか不安」

 三重野前監督は竹雅さんに言った。「続けられるだけ、続けたらいいんじゃないか。たとえ3カ月であっても、それは貴重な経験になる」。そして、竹雅さんは決意した。「こんな経験はできない。男子と一緒にやってみたい」

 広岡さんも小学生のころに野球を始めた。三姉妹の長女として育ったが、男友達に誘われて野球チームを見学に行くと楽しそうに見えたという。男子に交じっても足が速いほうで活躍できた。「小学生のころは、女子の方が成長が早く、男女関係なく楽しんでいた。強い相手でもチーム力で勝つことができるところに魅力を感じた」と振り返る。

 中学生になり、楽器をやってみたい、と吹奏楽部に入部し、野球とは距離を置いたが、「私を野球に誘ってくれた男友達は、中学校でも野球部に所属し、野球を続けていた。その姿を見て、どことなくうらやましく感じていた」。

 高校入学後、野球部のマネジャーになりたいと伝えた担任から、思いがけずこう言われた。「野球経験のある女子生徒が選手として入部する。一緒にやらないか」。広岡さんは「1人じゃないんだ。なら一緒にやってみようかな」と、選手としての入部を決意した。

 だが、練習は、生やさしいものではなかった。高校生ともなると男子との体力面、技術面の差は大きかった。だが、選手として入部したからには、同じ練習メニューをこなさなければいけない。

 慣れない硬式球は、打席に立つと、男子の球速に最初は恐怖すら感じた。守備練習のノックで、体でとめようとしてあざだらけになった。スクワットもあったが続けられなかった。「練習についていけず、何度も泣き、何度も辞めようと思った」。2人は入部当時を振り返る。

 それでも半年ほどすると、次第に練習もこなせるようになってきた。練習試合では、選手として出場することができ、野球にはまっていった。

 女子選手の強い心意気は、男子選手にも思わぬかたちで波及していった。溝部雅人主将(3年)は「初めは、正直驚いた。ついていけるのかな、と」。だが、2人を選手として認めるのに時間はかからなかった。「竹雅と広岡が頑張っているのに、自分たちが負けるわけにはいかない、と思うようになった。今では、仲間としてライバルとして大きな刺激になっている」と語った。

 2人の血のにじむような努力を知っている三重野前監督は「筋力トレーニングは特につらそうだったが、彼女たちだけ別メニューにすることは考えなかった。スライディングや守備練習で、体にあざもできていた。辞めずに続けてこられたことは本当にすごいことだ」と語った。

 女子硬式野球の大会に合同チームのメンバーとして2人が参加できないか模索したが、近くに女子チームはなかった。今夏、全国高校女子硬式野球選手権大会の決勝が甲子園球場で開催されることになったが、県内には女子の高校硬式野球部はない。

 三重野前監督は、別府鶴見丘の選手として公式戦に出られるよう高野連にお願いしたが、参加資格を「男子生徒」としている日本高野連の規定により、かなわなかった。7月5日に開幕する大分大会に、2人は出場できない。

 三重野前監督は「小中学校で男子と一緒に野球をやってきた女子選手は結構いる。だが、高校での受け皿が少ないのが現状だ」と嘆き、「少子化もあり、野球人口は減ってきている。野球を愛する女子選手が、男子と一緒に公式戦に出られるようになればいいのだが」と願う。(倉富竜太)

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