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「大会前の雰囲気じゃない」仲間を変えた球児のLINE

2021年6月25日10時30分

 【千葉】4月上旬、野球部の練習を終えて帰宅した県船橋主将の筒井俊介(3年)は、スマートフォンの通知に気が付いた。3年生全員が入っているLINEのグループに、いつもは素っ気ない短いメッセージの越智晴紀(同)から、18行にわたる長文が届いていた。

 大会前の雰囲気じゃない。一発勝負で持ってる力を100%出すことがいかに難しいことか、秋いやと言うほど思い知ったわけだから。負けたら終わりの勝負はそんなに甘くない

 当時は、県内の緊急事態宣言が3月下旬に解除されて、再開した他校との練習試合を一通り終えたころ。チームはけが人が出て、大量失点で負ける試合が続いていた。目前に迫った春季県大会を迎えられるような状態ではなかった。

 チームは昨年の秋季大会地区予選で、強豪の習志野を初戦で破った。しかし、ベスト8入りを目指した八千代松陰戦では逆転負けを喫した。この日の悔しさを忘れないようにと、筒井のスマホの背景はその試合のスコアボード写真にしている。

 しかし、雪辱を果たそうと意気込んでいた矢先、1月に緊急事態宣言が出された。平日は午後5時には下校しなければならず、練習時間は平日1時間だけに限られた。しかも、土曜、日曜日の週末は自宅待機で全く出来なくなった。

 「変えられないことは仕方がない。やれることをやろう」。チーム全員がそう思えたのは、大会が中止になった昨夏、腐らずに独自大会に全員で臨んだ先輩の姿を見ていたためだ。

 メンバー同士が対面で会えない分、一人ひとりができることを模索した。毎週末、メンバーはオンライン会議システムの「Zoom」を使って顔を合わせ、野球の勉強をした。日暮剛平監督がセオリーや戦術を解説し、部員らはノートにメモをとって聞いた。

 少しでも練習時間を確保しようと対面のミーティングもなくなったため、毎練習後にはメンバー間で、LINEを使ってその日の反省点などを送り合うようになった。モチベーションを保つため、Zoomでお互い姿を見せ合いながら筋トレする工夫もした。

 また、スマホのアプリを使って、会えないメンバーの日々の体調や睡眠時間、食事内容などの状態を管理した。日暮監督が全員のデータをみて、体に痛みがあるなど不調がわかれば、アドバイスを送るなどしてケアしていた。

 「野球ができないこともそうだけど、チームの心が離れるといけないと思った」と日暮監督は話す。「緊急事態宣言下でこれまでの『練習がつらい、苦しい』という思い以上に、『野球をしたいのにできないつらさ』を知ったのではないか」

 ただ、筒井には不安もあった。「画面越しに学んだことはグラウンドで出せるのだろうか。果たして意味はあるんだろうか」

 宣言が解除され、練習試合が解禁されると、筒井の懸念は的中する。

 互いに厳しい声をかけ合うはずの場面で、その一声が出ない。筒井は「周りに厳しくなる前に、自分がやってきたことが正しいのか、誰もが自分に自信が持てていなかった」という。グラウンドでの練習で身につくはずの「感覚」もつかめずにいた。

 そんな時に来たのが、越智の長文メッセージだった。越智は「冬は毎年しんどいトレーニングを乗り越える時期。それを一緒にできなかったことも大きい。人に言うのは得意じゃないけど、自分が今のチームを変える存在にならないと」と考えていた。コロナ禍で、LINEでメンバー同士が本音をぶつけあえるようになっていた。そんな環境だったからこそ発信したメッセージだった。

 越智は朝練で、周りがジャージー姿で軽く練習する中、いつも一人ユニホーム姿。「泥だらけになって部室に戻ってくる。どんな時も全力」なのが皆が共有する越智のイメージだ。

 そんな彼のメッセージは「チームの意識を変えた」と筒井はいう。これをきっかけにチーム全員の意識は引き締まった。迎えた4月下旬の春季県大会。初戦で千葉黎明にサヨナラ勝ちした。「自分たちのやってきたことが間違っていなかった」と確信できた。試合を重ねるにつれてチームの調子は上がり、57年ぶりのベスト4入りを果たせた。

 昨年は先輩たちが本気で目指しても挑戦すらできなかった夏の甲子園。筒井は彼らの思いも背負って挑む。「またコロナで練習が出来なくなるかもしれないという危機感を常にもっている。野球ができることは当たり前ではない、幸せなことだと思う」(敬称略)

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