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長所も短所も見える 仙台育英、全90選手の能力数値化

2021年6月22日09時15分 朝日新聞デジタル

 公式戦でのベンチ入りは、高校球児にとって大きな目標の一つ。強豪の仙台育英は投げる、打つなどの能力をすべて数値化し、そのデータに基づいてメンバーが決まる過程を可視化している。浜松西(静岡)は練習メニューなどを選手が考えることにこだわる。いずれも、やる気のアップにつながっているようだ。

 ■リーグ戦「甲子園より緊張」

 6月上旬の平日。グラウンドや室内練習場で打撃練習を行う仙台育英の選手たちを尻目に、学生コーチの守谷帆久人(ほくと)(3年)はバックネット裏の部屋に向かった。スコアブックを片手に、iPadを開く。

 「この前やった練習試合やリーグ戦の成績を入力するんです。練習中はここで作業していることが多いですね」

 画面には、全90選手が学年別、守備位置別に分けられ、一人一人の成績が並んでいる。

 打率や安打数、防御率や奪三振数のほか、打者のOPS(出塁率+長打率)や投手のストライク率など高校野球では珍しい細かい項目までぎっしり。

 別のページには、年4回行う測定会で集められたスイングスピードや打球速度、球速や一塁まで駆け抜けるタイムなど、個々の基礎能力が記されており、成長具合やチーム内順位が一目でわかるようになっていた。

 守谷は言う。「ここには選手それぞれの長所や短所が数値として表れていて、ライバル選手との比較もできる。夏に向けチーム内競争はさらに激しくなっていきます」

 部員は誰でもこのデータを閲覧することができ、その数値に基づく評価が、公式戦のベンチ入りメンバーの選考に直結する。

 野手はまず測定会のデータに基づいて、点数の高い12~15人がA、続く12~15人がBという順にDまでの4チームに振り分けられる。投手はプロ野球のドラフト会議のように、各チームが指名して選ぶ。

 この4チームが部内で総当たりのリーグ戦を行う。4月中旬から5月上旬までは、「優勝チームが春季宮城県大会に出場できる」との設定でリーグ戦を行った。

 試合中のサインや戦術は選手同士で決める。CチームがAチームに勝つこともあり、主将の島貫丞(じょう)(3年)は「緊張感は甲子園よりあるかもしれない。誰でも公式戦に出られるチャンスがあるので、みんな必死です」。敗れて、試合後に涙を流す選手もいるほどだ。

 優勝はAチームだった。残りのベンチ入り選手は、守谷が集計するリーグ戦のデータなどをもとに、他チームから選ばれる仕組みだ。

 リーグ戦は継続しており、夏の宮城大会のメンバーもこの仕組みで選考される予定だ。

■監督「選考のあいまいさ除く」

 なぜデータ重視なのか。

 須江航監督(38)の説明は明快だ。「まずは、選手に目標を可視化させてあげることが大事。どれくらいのレベルになればメンバー入りできるのか、基準を明確にする必要がある」

 背景には自身の苦い体験がある。仙台育英の野球部OBでもある須江監督は、入部したその日に周りとの実力差を痛感し、落ち込んだという。

 メンバー入りを目指すなかで、「『もう少し肩が強ければ』『もっと足が速ければ』と言われても、具体的な及第点がわからなかった」。2年秋に学生コーチになってからも疑問を持ち続けていた。

 指導者となり、仙台育英の系列の秀光中学(宮城)で教えていたころに選手評価にデータや数値を活用する方法を採り入れ始めた。2014年には全国中学軟式大会で優勝するなど結果も伴い、18年1月に高校の監督に就任後もこうした手法を続けている。

 それぞれの測定項目には最低限必要とされる指標が示され、選手にとっても目指すべき数値が具体的にわかる。たとえば二盗は、決められたリード幅(左足が一塁から365センチの地点)からスタートし、3秒30が最低ライン。球速は全員がマウンドから投球し、野手でも130キロ以上が求められる。

 また測定結果や実戦のデータ、評価基準は選手を通して保護者にも届く。須江監督は「選手選考のあいまいさを取り除いて、情報をオープンにする。説明責任を果たす意味でも数値を示すことは重要だと思う」と話す。

 優勝を狙った今春の選抜大会は8強止まりだった。チームの課題が浮き彫りになり、監督は大会後、「求人募集」を選手に出した。具体的なチームの弱点を明記し、それを補うための有力候補者も記されていた。

■出場機会得るには…「代打の切り札」

 選手のモチベーションは上がる。選抜ではアルプス席で応援していた外野手の武者勇樹(3年)も発奮した一人だ。手薄とされた外野手の成長株として名前があがっていた。

 今春のリーグ戦ではCチームに所属していたが、高打率を残して春季県大会で自身初のベンチ入りを勝ち取り、背番号15をもらった。

 準決勝の東北学院戦で1点を追う九回に代打で公式戦初打席に立った。中前安打で出塁して逆転サヨナラ勝ちにつなげ、12―0で大勝した仙台一との決勝でも代打で左越え二塁打を放った。

 入学以来、力量が数値化されてきたことで自分とチームの長所、短所を把握し、出場機会を得るために何を目指すべきかを考えることができた。

 その結論が「右の代打の切り札」だった。

 「試合に出るためには得意の打撃を磨くしかない」と周りが守備練習をしている時もバットを振り込んでいた。1年冬に125キロだったスイングスピードは今年の年明けに138キロに。打球速度も132キロから145キロに上がった。

 データを重視する手法は、一見、無機質な印象も与えがちだ。

 だが、武者は言う。「結果を出せば試合に出られるし、ダメなら使われない。みんな平等でわかりやすい。控えでも、代打、代走、守備固め、と道はある」

 チームの目標である「東北勢、初の日本一」へ向け、サバイバルは続く。(山口裕起)

 ■先発メンバー、考えるのは選手

 浜松西(静岡)は選手が主体となり考えることにこだわる。

 右腕、横山和真(3年)は6月第2週のテーマをクイック投球と設定した。常に全力で投げてしまうタイプで、強弱をつけることが苦手だった。水曜はクイックでの遠投とシャドーピッチング、木曜はクイックで打者と対戦などと自分で細かくメニューを設定し、週末の練習試合に備えた。結果は強豪相手に完投勝ち。5失点したが、走者を出してからギアを上げるという課題を試せた。

 主将の中村有翔(ゆうと)(3年)を中心に練習メニューは選手が考える。夏の静岡大会が近づくなか、重点的に取り組むのが課題練習。横山のように個人で課題を設定することもあれば、投内連係などチームの課題に取り組む日もある。

 練習試合の先発メンバーも考えるのは選手だ。主将と副主将で相談する。「練習で苦手な変化球打ちを克服できているから試したい」などと佐藤光監督(47)に起用の意図を説明し、納得させられれば採用される。その練習試合のオーダーや結果をもとに公式戦のメンバーは監督が判断する。

 県立の進学校。2014年に佐藤監督が着任し、選手主体の考える野球に力を入れてきた。「普通に練習するだけでは勝てない。考えることによって意欲的になって勝つ確率が上がる。自分たちでメニューを組めば練習過多にならず、ケガも少ない」と監督。横山は「自分で考えて試すことで分かることが多い。あの試合で左打者への内角直球が課題だと気づけたので、次はそれをテーマにする」と話す。

 甲子園出場は81年夏が唯一。それでも19年秋に県大会8強に入り選抜の21世紀枠の県推薦校に選ばれるなど、再び力をつけている。(大坂尚子)

 ■仙台育英のベンチ入りメンバー選考の流れ

・春、夏の宮城大会前、新チーム移行時、冬季練習開始時の年4回、測定会を実施

・「投力」を球速、本塁から二塁間の送球などで、「走力」を盗塁、二塁打走などで、「打力」を打球速度、飛距離などで測定

・測定会の数値をもとにレベルが高い順にA~Dにチーム分けし、リーグ戦を行う

(1チームの野手は12~15人、投手は別途、各チームからの指名に基づいて分配する)

・一定期間のリーグ戦優勝チームの選手が公式戦でベンチに入る

・先発メンバーはリーグ戦、対外試合(練習試合)での個人成績などをもとに決定

・優勝チーム以外から、リーグ戦、対外試合の個人成績などをもとにベンチ入りメンバーを追加

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