4代前から受け継がれる鳥谷選手の書 主将の信頼の秘密

2021年3月26日14時47分

 第93回選抜高校野球大会に5年ぶりに出場した敦賀気比。24日の常総学院(茨城)との初戦はタイブレークの末、5―9で敗れた。大島正樹主将(3年)は試合後、悔しさをにじませつつも、夏に向けて闘志を燃やし始めていた。

 敦賀気比打線は六回まで1安打。が、2番手本田克選手(3年)の好投に刺激を受けたかのように奮起し、終盤に同点に追いつく。延長十三回までもつれる激闘となったが、最後は及ばなかった。大島主将は「全員あきらめていなかった。自分もやったろうや、あきらめることないぞと声をかけ続けた」と振り返った。

 チームを牽引(けんいん)し続けてきた大島主将。彼の頼もしさの裏には、代々主将に受け継がれる一冊の本の存在があった。

 優勝した昨夏の独自大会から1週間もしない内に、真面目な性格や豊富な経験を買われ、新主将に任命された。が、リーダー的立場になったことがない自分に務まるのか不安だった。

 任命された日の夜、主将だった岡村匠樹(なるき)君から「これ、主将で受け継がれてる本やから」と手渡された。プロ野球阪神の元主将で現千葉ロッテの鳥谷敬選手著「キャプテンシー」(KADOKAWA)だ。4代前から受け継がれ、表紙には4人の名が記されていた。

 鳥谷選手も主将経験がなく、チームの士気をどう高めるか苦しんだという。スター選手の苦悩を知り、心が救われた。「自分なりの主将を目指せばいいんだ」

 例えば「若い選手がやりやすい環境を作った」の言葉を自分なりに実践。後輩に積極的に声を掛けて心をほぐし、のびのび練習できる雰囲気作りに努めた。

 声掛けは己への刺激にもなった。苦手だった左方向への打撃を猛特訓し、昨秋の公式戦は打率4割超。東哲平監督は「自分がまず率先してやるという姿勢が見えた」と話す。

 選抜出場決定後は、岡村君からLINEでエールが届いた。「俺らの分まで頼んまっせ」。甲子園に行けなかった先輩たちの分も頑張ろうと心に決めた。

 4代前の主将、橋本篤弥さん(21)は日本体育大で野球を続ける。「キャプテンシー」は、高校時代にバレーボール部で副主将だった母が寮に届けてくれた本だ。「今も引き継がれているのは知らなかった。後輩を思いやる気持ちでつながっていったのはうれしい」

 橋本さんはテレビで後輩たちのプレーを見守った。「逆転できなかったけど、同点に追いついたのはさすが。夏に向けてどうチームをまとめ上げるか、主将としてしんどい時期だと思うが、大島君には頑張って欲しい」とエールを送った。

 今大会、大島主将は無安打に終わった。「プレーでも引っ張る主将」という目標に向け、自身も更なる成長が必要だ。今夏の引退後、堂々と本の表紙に名前を書くためにも、「甲子園に戻って来られるように一から頑張りたい」。そう力強く誓った。(大西明梨)

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