野球部寮を買い取った30歳部長 選抜出場の北海の力に

2021年3月17日12時42分

 19日に始まる春の甲子園に出場する北海高校(札幌市豊平区)の野球部の寮は、学校ではなく個人が運営している。部長の立島達直さん(30)が3年前に自費で買い取った。

 今月3日、夕食どきの寮にお邪魔した。「今日はおひなさまだからね」と、立島さんの妻・萌絵香さん(26)が部員たちに桜餅を渡す。その腕の中には生後5カ月の大尊(たいと)くん。夕食のトレーには他にチキンフリッター、しめじのパスタ、ポトフが並び、みそ汁からは湯気が立っていた。

 寮は野球部のグラウンドから歩いて5分ほどの場所にあり、3階建てで築15年の1号棟と、2階建てで築5年の2号棟が道を挟んで向かい合う。

 部員の居室は合わせて24部屋で、26人が暮らせる。根室や函館など道内の遠方や、大阪など道外から進学してきた部員らが暮らす。

 食堂は1号棟の1階にあり、壁には手書きの「下宿9カ条」が掲げられている。消灯時間や門限のほか、九つ目には「隠しごと禁止」というユニークなものもあった。

 立島さんが寮を買い取ったのは、食事が理由だった。立島さんも同校の野球部出身で、現役時代は1号棟で暮らした。当時は民間会社が運営していたが、食事は冷えたもので、レンジで温めて食べていた。

 「食事ってめちゃくちゃ大事じゃないですか。自分で寮をやって、温かいごはんを食べさせてやりたいと思ったんです」。2018年、20年のローンを組んで2棟の寮を買い取った。

 夕食は萌絵香さんらがつくるが、朝食は立島さんの両親が担当している。父親の満弘さん(63)には、かつて北海への進学をあきらめた過去があった。

 中学で野球をしていた満弘さんは北海に合格したが、親から「公立に行け」と言われ、北海への進学をあきらめた。「北海野球部と言えばみんなのあこがれだった」と振り返る。40年の時を経て、いまはあこがれたチームを毎日見つめ、部員たちを支えている。

 満弘さんは、たとえ部員が寝過ごしても、あえて起こさないできた。「自立してほしい」という願いからだ。一緒に育んできた自立力で練習に励んだ成果が、甲子園で存分に発揮されることを願っている。(川村さくら)

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