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あの夏いつか笑えるように コロナ禍、今年の甲子園中止

2020年12月29日10時30分

 【岩手】小雨が降るなか告げられた。コロナ禍で戦後初の「甲子園中止」が決まった5月20日。春夏15回の甲子園出場を誇る盛岡大付の3年生37人は、グラウンドで監督の言葉をじっと聞いていた。

 ほとんどの選手が、甲子園出場を夢見て県外から進学してきた。栃木県出身の小林武都(たける)主将(3年)は「自分たちが行けると決まっていたわけではないから、悔しいというのは違う気がする」と気丈に話したが、無念さがにじみ出ていた。

 それでも、球児たちは野球を続けた。コロナ対策で大人数での全体練習はできなかったが、LINEなど通信アプリを使って練習メニューを共有し、自主練習に取り組んだ。32年ぶりの甲子園出場をめざしていた高田高校の平沢雄大郎主将(3年)は「甲子園をめざして積み重ねてきたものは消えない」とチームメートと自分に言い聞かせた。

 7月1日、県の独自大会が開幕した。選手1人につき2人までの保護者をのぞき原則無観客。スタンドで取材をしていると、例年であれば応援の演奏や声援にかき消されて聞こえてこなかったであろう、ベンチの選手の声に驚いた。「さっきこの打者に右前ヒット打たれてる」「次は変化球くるぞ」。攻守いずれのときも具体的で的確だった。

 そして試合後。敗れたチームの選手たちは、悔しさとともに「野球ができた」というすがすがしさを漂わせていた。象徴的だったのは決勝のあとだ。優勝した一関学院と、準優勝の盛岡大付の選手たちがグラウンドに集まり、帽子を交換して記念撮影をした。

 強豪校同士、例年は手の内を明かさないよう大会前に練習試合を組むことはない。だが今年は、コロナ禍で県外移動が制限されたため、複数回試合をしていた。一関学院の佐藤颯弥(そうや)主将(3年)は「コロナだからこそできたつながり。切磋琢磨(せっさたくま)してお互い成長できた」と振り返った。

 この夏は野球部以外の3年生も取材した。ボクシング、サッカー、将棋……。最後の夏に襲いかかったコロナ禍で大会が中止になり、それぞれが気持ちの整理をつけようともがいていた。

 記者も中高とラグビー部だった。つらい練習も「試合で勝つため」と思うと乗り越えられた。目標を失った絶望感は痛いほどわかる。そして、それを抱えたまま練習に取り組むやりきれなさも。だから思う。「あの夏があったから」と、いつか笑って振り返ることができるよう歩んでいってほしい。そして、後輩たちが来夏、努力を思いっきり表現できる場があることを願う。(中山直樹)

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