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がばい旋風はその後も 逆転満塁弾の副島、人生変わった

2020年8月19日21時36分

 佐賀北の副島浩史が左翼席に放った決勝初の逆転満塁本塁打。「公立でも私学をしのげるという希望を持てます」。現在、佐賀北を率いるOBの本村祥次監督は先輩の快挙に感じ入る。「がばい旋風」の余韻は、今なお残っている。

 八回1死満塁だった。副島への2球目は胸元の球。広陵(広島)のエース野村祐輔に背中を見せるようにしてよけた。スライダーのすっぽ抜け。ところが、副島は「直球で体を起こされた」と勘違いした。「それなら次はスライダーだろう」。思い込みがはまる。真ん中スライダーを踏み込んでたたき試合をひっくり返した。

 この八回。副島の一発までに様々なアヤがあった。佐賀北は1死後、エース久保貴大に代打と考えた百崎敏克監督を吉冨寿泰部長が止めた。その久保が左前安打。これがすべての始まりだった。代打の新川勝政が安打で続く。野村のスライダーを初めてとらえた。

 甲子園に異様な熱気が立ち込めた。佐賀北を押す手拍子がわき起こり、球場内に満ちた。辻尭人が四球で満塁。つなぎ役に徹した井手和馬も「打て」の指示をよそに、バットを振らずに押し出し四球を選んだ。

 広陵バッテリーの胸が波立った。押し出し四球の最後の球が実に際どかったからだ。ボールのコールに野村は「えっ」という表情を見せ、捕手の小林誠司は球を受けたミットでグラウンドをたたいた。

 直後の副島に打たれるまで、この回の野村は25球。コースに投げてもストライクにならず、配球も難しかった。「野村の一番いい球、スライダーを投げさせた。それを打った打者がすごいんです」と小林。野村も「また同じ場面になっても同じ球を投げますよ。あのときは、あの球しかなかったんで、僕には」。

 それにしても球場を包んだあの熱気。その源を春先に求める向きがある。禁止だったスポーツ特待生制度を多くの私学が採用していた実態が明らかにされた。だからみんなが公立の肩を持った、と。これに百崎監督はうなずかない。「公立も私学もない。それまで試合になってなかったから、もっと面白くしろ、というのがあったんでしょう」

 確かに佐賀北は七回まで1安打に抑えられ、たじたじだった。救援した久保は三~八回に二塁打を浴び、一つ間違えば大敗でもおかしくなかった。副島の快音は、久保の折れない心とバックの堅守のたまものだ。チーム打率2割3分1厘は金属製バット導入後、優勝校で最低。48四死球は大会最多。佐賀北の戦いぶりを記録は端的に表している。

 衝撃を起こし、歴史を刻んだ高校野球から副島は逃れられなかった。7年後、銀行を退職。プロ入りした野村の活躍が頭にちらついた。「銀行の成績がよくても、野村は『そう』で終わりでしょう。高校の監督で甲子園に出れば、『すげえ』と認めてくれるんじゃないかと。野球で頑張っているところを見せたかった」。佐賀県の教員に転じ、唐津工を率いて今年で3年目。手痛い一発を浴びせた相手に人生を変えられたことになる。=敬称略(隈部康弘)

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