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長野)高校野球 8月10日

2020年8月11日03時00分

朝日新聞DIGITAL

 佐久長聖が78チームの頂点に立った。試合ごとにメンバーを入れ替え、準決勝までに3年生52人全員がベンチ入り。決勝はベストメンバーで挑み、昨夏の選手権長野大会を制した飯山に快勝した。メンバーが入れ替わっても大会を通して計3失点。圧倒的なチーム力を見せた、まさに全員でつかんだ優勝だった。2020年度夏季高校野球長野県大会が10日、熱戦の幕を閉じた。

     ◇

 「おっしゃー」。拳を上げてスタンドの方向へ走る佐久長聖の選手たち。その最後尾。藤原太郎(3年)が一人、泣いていた。藤原弘介監督が近づき、頭をなでる。グラブで顔を隠し、何も言えない主将。「お疲れさま」。監督もそれしか言葉が出なかった。

 「太郎じゃなかったら、ここまでこられなかった。太郎が導いた優勝です」。監督とほかの3年生、誰に聞いてもそう言った。

 佐久長聖の今年のチームは、昨夏の初戦負けから始まった。直後、主将を決める投票では、3年生全員が藤原に入れた。

 言いづらいことも言ってきた。練習でミスが出ると「また初戦で負けるぞ」。さぼっている部員に「出ていけ」と怒鳴ったこともある。「長聖である以上、勝つことは使命です」。一人、背負い続けてきた。

 奈良県出身。桃太郎や金太郎のように正義感と力強さにあふれ、たくましく育ってほしいと名付けられた。小、中はチームが学年ごとで、小3から中3までの7年間、ずっと主将だった。「甲子園に行きたい」と佐久長聖に進んだ。

 5月20日、甲子園がなくなった。泣き続けるみんなに、藤原は「前を向こう」と声をかけた。翌日には練習を始め、明るい主将であり続けた。「自分が折れたら、チームが折れる」

 みんなの前では涙は見せなかった藤原。中止発表の数分後、父の康成さん(61)に電話をかけた。「ごめん。長野に行かせてくれたのに。約束守れなかった。ごめん、ごめん」。寮の部屋で一人泣いた。

 今大会、試合ごとにメンバーを入れ替えた佐久長聖。勉強に集中するため、練習をやめた部員もベンチに入った。反対意見は出なかったのか、と聞く報道陣に藤原はきっぱり言った。「2年半ずっと一緒に過ごしてきたんですから」

 勝って泣くのは、初めてだった。「甲子園がない悔しさもあります。でも、この涙は達成感です。やってきたことは間違いじゃなかった」

 負けたらどうしようと不安になった時、必死に練習するみんなの顔を見ると安心できた。最後に泣く自分を、みんなは笑ってくれた。あんなに怒ってばかりだったのに……。

 甲子園のない大会を終えた今、何を感じますか。そんな問いに藤原はこう答えた。「仲間の大切さです」(田中奏子)

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