コロナで出場辞退、「幻の1回戦」が実現 記憶に残った
2020年8月10日12時52分
校内で新型コロナウイルスの感染者が出たため、「2020夏季岐阜県高校野球大会」への出場を辞退した県立瑞浪高校と、1回戦で対戦するはずだった中京高校が9日、練習試合をした。「幻の1回戦」を戦った両校の選手は、笑顔で夏を締めくくった。
試合は瑞浪市の中京の硬式野球部グラウンドであった。中京は三回、渡辺悠然(ゆうぜん)君の2点本塁打で点差を広げると、八回には、プロ注目の元謙太(げんけんだい)主将も本塁打を放った。
瑞浪は四回、鈴木琉真(りゅうま)君が出塁すると神谷倖佑(こうすけ)君の適時打で初得点。六回には、神谷君の本塁打で反撃の流れを作ったが、中京が12―5で押し切った。
両校は、県高野連が主催した同大会で対戦が決まっていたが、雨天延期のさなかに瑞浪で生徒の感染が確認され、休校に。1回戦は中京の不戦勝となった。
瑞浪の安藤和昭校長が「3年生に高校最後の試合を経験させてあげたい」と中京の和田尚校長に申し入れ、この日を迎えた。
中京の橋本哲也監督は「選手たちには『瑞浪の分までがんばろう』と声をかけてきた。実現できて本当によかった」。瑞浪の岡本学和(まなや)主将は「中京のおかげで高校野球に気持ち良くピリオドが打てた。感謝の気持ちでいっぱいです」と試合後、語った。
この日は、感染予防に十分配慮したうえで両校の吹奏楽部なども参加。五回裏の終了後、中京のチアリーダー部や吹奏楽部が両校にエールを送った。瑞浪の吹奏楽部も七回の攻防後、「宿命」などを演奏し、試合を盛り上げた。
中京のチアリーダー部の八木保ノ樺(ほのか)部長(3年)は「今年は出来ないと思っていた野球応援に参加できて幸せだった」。硬式野球部の元主将は「久しぶりの応援を聞いて、昨年の夏を思い出した。改めて応援の力を感じました」と話した。
試合後、球場アナウンスは「記録ではなく、記憶に残る素晴らしい試合でした」とたたえた。両校の3年生は、グラウンドから保護者に感謝の言葉をそれぞれ述べた。(松山紫乃)