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松井秀喜の5打席連続敬遠 6番打者だった記者が迫った

2020年8月9日15時28分

 あの夏、私は星稜の6番打者だった。1年から4番で高校通算60本塁打の松井秀喜が、甲子園最後の試合で5打席連続敬遠。直後の5番打者で、重圧に苦しむ月岩信成も間近に見た。相手は馬淵史郎監督の指示を守って勝った明徳義塾。勝利至上か真っ向勝負か。この試合で世間は真っ二つに割れた。

 4年前の取材では「松井5敬遠」の試合に関わった多くの人に会った。それぞれに「あの試合」への温度差があることが、興味深かった。勝者と敗者、それぞれの野球観が垣間見えた。

 取材を歓迎されなかったのが、チームメートだった元大リーガーの松井と月岩。松井は「話をし尽くしたよ。勝手に書いてくれ」と言いながらも、「戦術的に相手が上だった。それが、あまりに極端だった。だから賛否が出た」と、分析してくれた。

 常に淡々とした口調。巨人、ヤンキースなどで活躍し、引退後3年目での取材だった。「甲子園で5敬遠の打者。プロでは心のどこかで、それを証明しなければと思っていた」。重荷を下ろしたような、すっきりした表情が印象的だった。

 月岩は「明徳の話はこれが最後」という条件で応じてくれた。石川県七尾市出身。気さくな男だが、「あの試合」の話題になると、口は重い。直前の敬遠で、悲鳴と怒号が渦巻く異様な打席が続いた。「能登から出てきて、甲子園に出て満足した。無難にこなそうというのが、あったかも」。雰囲気にのまれた理由を、静かに語った。

 エースの山口哲治(てつじ)は怒っていた。投げては三回までに3失点するも、四回以降はほぼパーフェクト。打っても5打数3安打で孤軍奮闘した。「試合が終わって勝者も敗者も笑顔がなかった。あってもすぐ消えた。それが全て」。負けん気の強い哲治らしかった。

 一方で明徳の皆さんには、歓迎してもらった。中でも馬淵監督には、自身の球歴や野球部の教え子の話など、長時間付き合ってもらった。松井の言う「極端な戦術」のポイントとして、「普通はビビる。河野(和洋)やからあの作戦がとれた」と、一番に先発の河野の名を挙げたことを思い出す。

 外野手だった河野はエース岡村憲二の故障が完治せず、度胸を買われ投手を務めていた。「監督が『カラスは白』と言えば白。5万の大観衆より、監督の方が怖かった」と振り返った。甲子園全体がアウェーと化したマウンド上で戦術を貫き、9回を投げきった。

 「馬淵さんは運がエエ。あの試合に勝って、松井君がプロで一流になって救われた」と捕手の青木貞敏。主将の筒井健一は「みんなが60歳になったときにでも、星稜と明徳のメンバーがどこかで集まれたらいいですね」。2人の言葉に、勝負からの年月を感じさせられた。

 星稜の恩師・山下智茂総監督が総括した言葉も忘れられない。「力がないから負けた。僕はスポーツマンシップで戦い、社会人野球の監督経験があった馬淵さんはゲームズマンシップで戦った。そういう試合」

 2019年秋の明治神宮大会で、「5敬遠」以来となる明徳対星稜の公式戦が実現した。27年前に2年生遊撃手で出場した林和成監督が、馬淵監督に挑んだが5―8で再び星稜が敗退。出場選手は、もちろん、当時は生まれていない。時間が新たな歴史を紡いでいく。=敬称略(福角元伸)

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