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厳しい練習に「もう無理」 残ったエースが見つけた相棒

2020年8月3日07時00分

 24日の練習試合。チームメートにはまだ、ぎこちない空気が漂っていた。相手の鎌ケ谷西と比べてベンチは静かで、皆おとなしく座っている。

 市川工・浦安南・県松戸の3校連合。それぞれのユニホームを着ているので、守備では「市川工の青」「浦安南の白」「県松戸の白・黒」の3色が、どうしても急造感を出してしまう。

 そんな中、エースの本田生樹(うぶき)君(浦安南3年)は堂々とマウンドに立つ。

 走者を得点圏に背負っても動じない。マウンドから後ろを向き、内野手や外野手の守備位置を手ぶりで指示する。横手から130キロ近い切れのある直球とスライダー、シンカーで三振を積み上げ、3―0で完封した。

 強豪・習志野の捕手として夏の甲子園に出場した経験があり、選手に高い向上心を求める浦安南の白鳥了監督も「技術的な課題はあるが、相当成長した。大学でも野球をやらせたい」と信頼を寄せる。

   ◎  ◎

 「こんなはずじゃなかった」。本田君には胸の奥にしまい込んだ思いがある。

 小学5年で野球を始め、中学2年から投手。中学3年ではエースとして、市川浦安両市の総合体育大会で3位に入った。高校は白鳥監督の下で甲子園を目指そうと浦安南を選んだ。

 1年の夏。初戦で先発して実力校・日大習志野を相手に内野ゴロ三つ、外野フライ四つなどの凡打で3回2失点にまとめ、同級生2人も打撃で活躍。1年生3人が3年ぶりの夏1勝に貢献した。

 2年の夏は初戦で負けたが、「来年は期待できる」(白鳥監督)選手がそろっていた。

 本田君たちが最高学年となった新チームは、「甲子園を目指す」という目標で一致。「守備の確実性」「打撃の迫力」……そんなテーマで語り合い、本田君は大観衆で埋まった甲子園のマウンドに立つ自分を想像した。

 その横で、静かな危機が進んでいた。部員数の減少だ。1年の夏は14人いた。2年の夏は12人に。新チームは本田君ら2年生5人に1年生2人の計7人しかいなかった。

 新チーム始動から約1カ月後の昨年8月。練習後、自転車で並んで帰っていた同級生がつぶやいた。「もう無理。部活やめるわ」

 厳しい夏休みの練習。走り込みの量が増えた一方、守備練習ではバント処理の鈍さ、悪送球など、ミスがミスを呼ぶ悪循環が続いていた。約3カ月で、本田君を除く2年生4人全員が退部した。本田君はLINEで必死に引き留めたが、返信がないこともあった。

 1年生2人と計3人で練習していた昨年11月。監督が集合をかけた。「春と夏は、連合で出るから。じゃあ解散」

   ◎  ◎

 11月下旬。連合を組む市川工の部員6人と初めて合流した。「本田生樹です。ポジションはピッチャー」。自己紹介はお互いが緊張し、それぞれ名前と守備位置をつぶやくだけで終わってしまった。

 そして初練習。内野の守備練習では、ボールをお見合いしたり、ベースカバーが遅れたり。「こんなので本当にやっていけんのか」。重い空気が漂った。

 打ち解けるしかない――。平凡なゴロのトンネルや落球など、練習で出た珍プレーは笑い合った。本田君もまた、同じ投手や他校の後輩に「ボールを捕るときはもっと腰を落として」「声を出さないと伝わらないよ」と声をかけた。

 今春、県松戸の3人が加わった。そこにいた捕手の吉沢誠矢君(3年)は、自分が投げたい球をよくわかってくれた。コロナ禍で数カ月会えなかったが、サインに首を振ることはほとんどない。ピンチではマウンドに来て、笑顔で癒やしてくれる「相棒」だ。

 3校連合に光明がないわけではない。本田君は打たせてとるタイプ。守備の確実性が要になる。

 理想とする守備は7月24日の練習試合でもあった。終盤の一死一、二塁。本田君が遊ゴロを打たせ、市川工の内野手3人が併殺でピンチを切り抜けた。あの時は、ベンチも含め、チームが一丸となって沸いた。

 来月4日の初戦でこんな場面をどれだけ再現できるか。特別な夏を、特別な仲間と迎える。=おわり(福冨旅史)

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