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休部中、思い出した3人だけの練習 最初で最後の大会に

2020年7月19日11時45分

 日本海に近い浜坂(兵庫県新温泉町)のグラウンドを夕日が照らしていた。

 昨年11月、野球部の辻本由雄監督(64)が球拾いをしていると、福井聡太君(3年)が制服姿で近づいてきた。目を合わせようとしない。不安がよぎる。「モチベーションが続きません。休部させてください」

 昨年の春は新入部員はゼロだった。夏に3年生7人が引退すると、残ったのは福井君ら2年生3人だけ。1人がピッチングマシンに球を入れ、1人が打ち、残りの1人と監督が球を拾う。そんな練習を繰り返していた。「ナイスバッティング!」と1人が大きな声を出すが、呼応する声はない。

 そんな状況で、福井君は野球を続ける意味が分からなくなっていた。ただ、野球が嫌いになることもできず、「休部」というあいまいな選択をした。

 辻本監督は部員のやる気を保とうと、近隣の高校の練習に交ぜてもらったが、福井君は他校を見ると「なんで俺らは部員が少ないんだ」と悔しさを募らせた。

 「休部すること、どう思っている?」。主将の山本大輔君と投手の中村廉君の気持ちはもちろん気がかりだった。2人とは中学から一緒に野球を続けてきた仲だ。「人数も足らんし、そう考えるのも仕方ないよ」。2人も野球への気持ちは少し冷めていたが、将来の新入部員のためだと思って続けていた。

 冬になり、練習はいっそう寂しくなった。2人だけで練習している姿を見ると、福井君は申し訳なさと、自分に対する情けない思いが込み上げた。

 そして春。グラウンドから2人の姿も消えた。新型コロナウイルスの影響で約2カ月間の休校。福井君の自宅で、父親の洋一さん(51)はかける言葉も見つからず、夏の選手権大会中止の決定を報じる新聞をそっと食卓に置いた。

 しばらく野球から離れた生活を送っていた福井君は、家に置いてあるバットを見て、3人で練習をしていた日々を思い出していた。「3人だけでも、楽しかったなあ」。チームの主力だった福井君が戻ってくるのを2人も待っていた。

 6月4日、県の独自大会開催の知らせが、辻本監督に届いた。3年生を最後の大会に出場させてあげたいと、陸上部やバスケ部の野球経験者に「助っ人」を頼んだ。「力にならせてください」という返事がうれしかった。

 翌日、グラウンドに立っていたのは新入部員の1年生4人、そして3年生3人。福井君がバットを構えて叫んだ。「元気を出していこう!」。おう、と応える声がグラウンドに響いた。

 7月にはさらに新入生1人が加わり、浜坂は助っ人も合わせた選手11人で、18日に開幕した夏季県高校野球大会に挑む。3年生3人には、新チーム結成から最初で最後の大会だ。

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