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東京)高校野球「育成功労賞」に都内から2人

2020年7月16日09時00分

 高校野球の発展に尽くした指導者に日本高校野球連盟と朝日新聞社が贈る「育成功労賞」の今年度の受賞者が決まった。東京都内からは、二松学舎大付監督の市原勝人さん(55)と、調布北の前監督、渡部(わたべ)静夫さん(71)の2人が選ばれた。

     ◇

 二松学舎大付の練習を見学させてもらった。グラウンドでの練習を見ていると、素人目にも「美しい」とは思えない投げ方、打ち方をする選手が目に入る。

 直さないのか、監督に尋ねた。しかし、それこそが指導者としての哲学だった。「明らかに間違っている時は指摘します。でも、自分のもとに来た選手の個性は潰したくないんです」

 実力校でありながら、長く、夏の甲子園に届かなかった。あと一歩の準優勝が3季連続。それを2002年から04年まで味わった。「自分に、選手に、何が足りないのかを考え続けました。ある時、気づいたんです。すでに足りている、ということに」

 それまで「ここが悪いから、こうしろ」「あそこを直せ」。選手の悪い所ばかり見ていた。しかし、「それだと長所が見えません。悪い所ばかり見て、どうするんだと思ったんです」

 以来、選手が自ら考えることを指導の中心に据えている。「指導者に言われるがままの、ロボットみたいな選手にしたくないんです」。卒業する教え子には必ず、こう伝えている。「自分を育ててくれようとする声には耳を傾けろ。ただ、それを採り入れるかどうかは自分で判断しろ」。それは、野球を離れたあとの人生にも必ず生きる、と信じている。

 3割打者も、10回に7回は凡退する。「安打を求めたら7割が失敗じゃないですか。やれば必ずできることしか求めません」。最初のストライクを打つ、打ち取られても一塁まで全力疾走する。「それができれば成功です。高校生には成功体験の積み重ねこそが大切なのではないでしょうか」

 一方で、最近の高校生の変化も感じている。「厳しさの裏側の愛情を理解できない子が増えました」。優しい言葉や同情だけを求める子が増えたという。

 コロナ禍の今年、3年生に優しさと同情が集まっている。「それに慣れると、他人に優しさを要求する子になってしまう」。実力ある選手は下級生でもスタメン起用するのが市原流だ。今大会も、3年生を特別扱いしない。「勝っても負けてもサバサバ――。そんなゲームはやりません。勝って泣く、負けて泣く。同じ戦いをします」

 「二松学舎」の校名にもある松が好きだという。座右の銘は「雪中松柏(しょうはく)」。志や節操を曲げない、という意味だ。「派手に花を咲かせる木ではない。しかし、たとえ豪雪の中でも葉の色を変えずに立ち続ける松のような、凜(りん)とした生徒を育てたい」(抜井規泰)

     ◇

 中学時代は野球部だったが、高校、そして東京学芸大でも体操部。当時は「体操ニッポン」の全盛時代だった。五輪でメダルを次々獲得し、「体操選手に憧れた。野球は好きでしたが、見る方。千葉出身なので長嶋茂雄さんのファンでした」。

 教員になり、1972年に最初に赴任したのは墨田工定時制。同校で定時制通信制軟式野球の運営にたずさわった。「萩本欽一さんら、熱心に野球を支える人が数多くいることを知りました。いろんな背景の生徒がいたが、彼らとやる野球のおもしろさも分かるようになった」。高校野球に関わるきっかけになった。

 81年に新設校の松が谷(八王子市)へ。校長に「野球部の監督をやりたい」と願い出た。南野(多摩市、現・若葉総合)に異動し、両校で計18年間、指導した。その後、二つの高校で校長を務め、2009年春に定年退職。非常勤講師として調布北に赴任し、進路指導などを手伝う一方で10年4月から監督に。校長経験者が再びグラウンドに立つのは極めて異例だ。

 率いたチームのスコアは大切に保存している。印象に残る試合の一つは、12年夏、西東京大会2回戦で戦った国学院久我山戦。前年春の選抜大会に出場し、注目の好投手がいた。この試合、相手エースは先発せず、調布北は七回表まで4―2でリード。「勝てるぞ」とベンチが盛り上がった。しかし、七回裏に同点に追いつかれ、八回裏には一挙5点を失った。終盤は登板した相手エースに抑えられた。

 都立高で1勝する難しさは骨身にしみている。「でも努力しないと勝てない。全国制覇とは違うけれど、頑張った勝利には、同じくらいの価値がある」。その1勝のために我慢し、耐える。「結果を出したいなら、何かを犠牲にしないと。恋愛だったり髪形への関心だったり」。その我慢が「自信となり、勝つことでさらに粘りが身につく。人生の粘りにもつながる」。

 調布北では今年3月まで10年間、70歳になるまでベンチに入った。生徒には「愛される野球部員になれ」と伝えてきた。「でも、これが難しい」。自分の役割を果たす、一生懸命やる、勉強する。それが伝われば、みんなが応援してくれる。

 「野球バカになっちゃいかん」とも。野球「を」やった、ではなく、野球「も」やった。そんな3年間であってほしい。周囲の指導者からは、「だから甘い」と笑われるそうだが、「高校生であることを忘れてはいけません」。

 監督は退いたが、今もグラウンドに姿を見せる。(前多健吾)

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