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台湾出身の2年生が挑む「最後の夏」 夢はプロ野球選手

2020年7月17日17時00分

 悠然と右打席で構える。今月9日、興国(大阪市天王寺区)の主軸、尤彦晟(ユウイェンチェン)君(2年)は紅白戦で長打を放った。木製バットながら、鋭い快音が響いた。

 台湾出身の尤君には今年が「最後の夏」だ。日本のプロ野球選手になることをめざして留学してきた。台湾は秋入学のため、春入学の日本と半年のずれがある。尤君は現在の3年生と同じ年齢で、来年の夏は年齢制限で出場できない。

 それなのに新型コロナウイルスの影響で夏の大会は中止が決まり、甲子園はめざせなくなった。

 尤君は残された時間について考えた。「僕はプロ野球選手になりたい。スカウトに好かれる選手になるために、手伝ってください」と喜多隆志監督(40)にLINEで思いをぶつけた。

 1997年夏に智弁和歌山で甲子園優勝を経験し、プロ野球ロッテなどを経て2年前からチームを率いる喜多監督。プロの厳しさは身をもって実感している。「海を越えて日本に来た。その強い思いに応えて、いい結果を出させて夢をかなえてあげたい」

 尤君がアピールする場を増やすには、チーム一丸で勝ちを重ねるしかない。

 中学時代の尤君は、国際大会では4番打者として本塁打も放つなど活躍した。台湾も野球が盛んだが、よりレベルの高い日本球界を志した。米大リーグ球団のスカウトを務める男性の紹介を受け、昨年6月に来日し、興国に入った。

 興国は1968年夏、甲子園で優勝した古豪だ。尤君はいきなり背番号20をつけてベンチ入りした。

 日本語がほとんど話せないまま臨んだ昨夏の大阪大会。大商大との1回戦に3番・一塁手で先発出場した。2点を追う九回2死一塁、一打同点の場面で尤君に打順が回った。だが空振り三振で、チームも敗れた。4打数無安打に終わった尤君は「3年生には最後の試合。めちゃくちゃ悔しい」と泣き崩れた。

 雪辱を期してバットを振り込んだ。高校通算30本塁打を自らの目標にした。だがコロナ禍で部活動は一時休止に。「今はまだ9本。だからたくさん試合に出たい」。焦りは隠せない。

 野球部は6月に練習を再開した。3密を防ぐため、グラウンドに入る人数は制限されたが、尤君は3年生の練習にも参加できるようになった。主将の浅利太門君(3年)は「引っ張って飛距離が出るのはもちろん、逆方向にもホームランを打てるのは他の選手にできないこと」と一目置く。

 18日に始まる府大会は、例年より10人多い30人までのメンバー登録が認められている。興国は31人の3年生を中心に臨むつもりだ。

 ただ、浅利君は、優しく人当たりのいい尤君が、覚えたての日本語で仲間と必死にコミュニケーションを取りながら、懸命に練習に励む姿を見てきた。

 「愛らしい子です。ほかの後輩よりも出られる大会が少ないことは全員が理解している」。尤君がメンバー入りしても、みんな納得するのではないかと思う。

 興国の初戦は18日、日新が相手と決まった。喜多監督は前日にメンバーを発表する。「自分も3年生も最後の大会。試合に出てホームランを3本打ちたい。そして優勝したい」と尤君は誓う。できる限り多く打席に立ち、アーチを描く。チームのために、そして自らの夢をかなえるためにも。(浅沼愛)

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