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たった一人の3年生は主将でエース 何度も辞めようと

2020年7月11日06時50分

 岩山が日本海に切り立つ美しい浦富海岸(鳥取県岩美町)。そのそばにある町唯一の高校・岩美で18人の部員を束ねているのは、たった一人の3年生、主将でエースの沢和輝だ。

 部を辞めようか。そう考えたことは一度や二度ではない。最初の壁は入学してすぐだった。一緒に入部したのは3人だったが、初めての夏を迎える前に1人になった。心の支えになったのは、7人いた一学年上の先輩たち。「自分からしたらみんながお兄ちゃん。『何かあったら相談してこい』とか、常に声をかけてくれて」。先輩たちと過ごす毎日は楽しかった。

 2年生になると、10人の新入生が野球部の門をたたいた。練習は途端ににぎやかになり、大好きな先輩たちにとって最後の夏に単独チームで臨めるうれしさも大きかった。でも、「これから自分1人がこんな人数を引っ張っていけるのかな」。先輩たちが抜けた後のことを考えると、プレッシャーは日に日に増した。

 不安を抱えた中での新チームの出発。もともとがつがつした性格ではなく、リーダーを務めた経験もなかった。指示したはずの内容が行き届かない。後輩一人一人を十分に見てあげられない。毎日のように悩み、部活に行く足取りは重くなった。そんな沢に、高垣祥司監督(49)は明るい言葉をかけ続けた。「一緒に頑張って行こう」

    ◇

 「チームを良くしたいなら、自分がまず強くならなきゃいけない」。練習後も電話で相談に乗ってくれる監督の存在に救われ、黙々とウェートトレーニングに打ち込んだ。コースの投げ分けや緩急が磨かれ、球の威力も増した。投手として成長する姿に、次第に後輩たちが応え始めた。

 沢とバッテリーを組む捕手の前田九龍(くりゅう)(2年)は「チームメートにだめなところがあったら、和輝さん1人じゃなくて自分も言わなきゃと思って」。遠慮をやめ、自らチームを引っ張るようになった。前田は「我慢強くて、優しくて、周りをよく見ていて頼れる」と、沢に全幅の信頼を寄せる。後輩の成長を感じると、次第に部活が楽しくなった。

 最後まで岩美で野球をしよう――。冬が終わると迷いは無くなっていた。今春はさらに8人の新入生を仲間に迎え、部は一段とにぎやかになった。

    ◇

 最後の夏を前に、頭に浮かぶのはお世話になったたくさんの人の顔だ。いつも飲み物を差し入れてくれる町の人たち。お互いの名前も知らないのに、岩美高生だからと声をかけてくれる。暇があれば練習に顔を出してくれる部の卒業生。自分では気づかなかったところを見つけ、アドバイスしてくれる。振り返れば、高校野球生活はいつも周りに支えられていた。

 初戦は開幕の11日。第2試合で鳥取商と対戦する。練習の成果を出し切って、集大成を見せることが目標だ。父・佐登志さん(53)は「この環境が息子を大きく変えてくれた。岩美でやってきてよかったと思える試合をしてほしい」。高垣監督は「沢の姿は岩美の誇り。平常心でマウンドに堂々と立ってくれ。それだけです」と話す。(宮城奈々)

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