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夏のメンバー、3年だけか全学年で競うか 出した答えは

2020年7月10日18時45分

 個人の幸せか、チームとしての喜びか。2年半ほぼ毎日一緒にいて、ここまで本音をぶつけ合ったことってあったろうか――。

 練習が再開した6月、約3カ月ぶりに顔を合わせた仲間たちを前に、仙台一の主将森拓真君(3年)は、あまりの手応えのなさに、肩すかしを食らった気分だった。

 この日、グラウンド整備に身が入っていないのが気にかかって、ミーティングを開いた。いつも通りの呼びかけをしたつもりだった。「やってきたことをぶらさず、最後までメンバー争いをして、県優勝を狙おう」。なのに、返事に威勢がなかった。

 インターハイ中止などをきっかけに、他の部活での引退話で持ちきりだった。

 その夜、副主将の若林秀真君(3年)が「このまま進めてもどうだろう」と電話をかけてきた。「みんなの意見が出しやすいようにしよう」と。

 もう一度、放課後に話し合いをすることになった。ちょうど独自大会の報道が出た日だ。「甲子園と同等の思いで試合に臨む」。他校の主将の意気込みも流れた。

 集まったのは3年生20人。教室の黒板の前で、森君が投げかけた。

 「3年生だけで臨むか、全学年でベンチ入りを競うか。どっちかに手を挙げてほしい」

 森君は、当然のように、「全学年で競う」に手を挙げた。県内屈指の進学校でありながら、3度の甲子園出場を誇る古豪。昨秋の県大会は13年ぶりに8強まで勝ち進んだ。準々決勝で九回に逆転負けを許したのが、忘れられない。

 「必勝メンバーなら本気で狙える」という手応えがある。たとえ先に甲子園のない独自大会だったとしても、勝利にはこだわりたい。それに、これまでの方針を変えるのは「コロナに負けた」みたいでイヤだ。

 だが、そうじゃない意見も多かった。

 大学受験が頭をよぎって、部活を続けることに葛藤を感じるようになっていた阿部幸大朗君(3年)は、「3年生だけ」を選んだ。

 「甲子園があるならメンバー争いはわかる。でも、今大会は3年生の救済措置なんじゃないか」

 小中まではレギュラーだったが、高校では一度もベンチ入りしていない。夏の生き残りをかけて、秋の大会後、野手から投手に転向した。140キロの速球はなくとも、緩急に活路を見いだし、変化球を磨いた。だが、その成果を披露するチャンスすら、まだない。

 チームが勝つのはうれしいに決まっている。でも、下級生にポジションを奪われる悔しさは、経験した人にしかわからない。最後の夏もスタンドで終わるっていうのだけは、受け入れがたい。

 挙手の結果、「3年生だけ」の意見が多く、3対1に割れた。そこからさらに話し合いは続いた。

 「みんなの頑張りを知っているから、思い出を作りたい」

 「3年生だけでやるのが思い出になるのか。メンバー争いをする過程も含めて思い出だ」

 「出られて楽しいじゃなく、出られない人の思いをくみ取ってプレーしたい」

 「ベンチに入っていない人の気持ちがわかっているのか」

 「勝つことだけがチームの幸せじゃない」

 「個人の幸せとチームの幸せのどっちが大事か」

 涙ながらに話す部員もいた。2時間ほど経っても、話はまとまらなかった。ただ、どういう形になろうとも、「勝ちたい」という気持ちではつながっていた。

 「最後は監督に決めてもらおう」。森君は千葉厚監督(42)に託した。

 次の日、告げられたのは「3年生全員ベンチ入り」という答えだった。千葉監督は「下級生には、戦う背中を見せてほしい」と付け加えた。

     ◇

 「9月19日を忘れない」

 練習場のベンチの中にあるホワイトボードには、昨秋の県大会で敗れた日付が掲げられている。

 話し合いをした2日間は「必要だった」と森君は感じている。あの悔しさを、みんなで乗り越える。

 「本当の気持ちを出し合って、結束が強まった。ただの思い出作りにはしない。3年間をともに乗り越えた仲間と県優勝をめざす」

 ぶつけるのは、大会が開幕する11日の初戦だ。(大宮慎次朗)

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