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香川)尽誠学園、甲子園へ 選抜中止受け独自の交流試合

2020年6月11日09時30分 朝日新聞デジタル

 春の選抜高校野球大会に出場予定だった尽誠学園(香川県善通寺市)が8月、阪神甲子園球場(兵庫県西宮市)でプレーできることが決まった。日本高校野球連盟が救済措置として「交流試合」を開催すると発表した。思いがけない「甲子園」の知らせに、同校の関係者からは喜びの声が上がった。

 10日午後4時半ごろ、同校のグラウンドに部員らが集合した。白井良尚校長が甲子園での交流試合の決定を説明すると、部員からは思わず笑みがこぼれた。

 菊地柚(ゆず)主将(3年)が「このような状況でも野球ができることに感謝し、見る人に元気を与えるプレーをします」と決意表明した。

 西村太監督(41)は「心の穴が埋まらないまま、それでも3年生たちは前向きに練習していた。甲子園で校歌を歌うという当初の目標をかなえるチャンス。全力で挑む」と話した。

     ◇

 歓喜と落胆の間で揺さぶられ続けた半年間だった。思いがけなく決まった甲子園での試合に、尽誠学園の野球部員たちは笑みを見せて喜んだ。

 同校の野球部は、甲子園を夢見て県外から門をたたいた部員が多い。3年生38人のうち31人が県外の中学出身で、内野手で主将の菊地柚(ゆず)君もその一人だ。小学3年生のころから憧れ続けた甲子園のグラウンドの土を、ようやく踏めることになった。

 9日、同校のグラウンドで、4人の部員が「柚、もっと追い込め」「そんなもんか」と笑顔で声をあげた。視線の先には顔を真っ赤にし、約5キログラムのロープで体幹トレーニングをする菊地君がいた。

 寡黙で、仲間から「いじられやすい」性格というが、野球に対するひたむきな姿勢に部員の誰もが一目置いている。

 神戸市で生まれ、兄や姉の影響で地元の少年野球チームに入った。小学3年のとき、父につれられ、初めて甲子園で高校野球の試合を見た。球場の熱気に圧倒され、その中でプレーする選手らに憧れた。その日から「甲子園出場」が目標になった。

 中学では硬式のクラブチームに所属した。転機は、3年ごろの試合。4打数4安打と打ちまくった。たまたま尽誠学園の関係者が見ていた。後日、チームの監督から「お前に興味あるらしいぞ」と告げられた。兵庫県内の学校からも勧誘されたが、参加校が少ない香川の学校の方が甲子園に行ける確率が高いと考えた。

 母親に相談すると「絶好調の日に見に来たのなら、運命なのかもね」と言われ、背中を押された。

 厳しい練習や慣れない寮生活も、甲子園への一途な思いで乗り越えた。1年ではベンチ入りできず、誰よりも努力すると心に決めた。寮の消灯時間まで黙々と、素振りや筋トレなどを繰り返した。

 「弱音を吐いたこともない。柚なら背中でチームを引っ張ってくれる」。西村太監督は昨夏、主将に指名した。菊地君は「まさかと思った」と振り返る。口下手な自分に務まるのか、不安だった。

 捕手の橘孝祐君(3年)は、昨年の秋季四国地区高校野球県大会での菊地君の姿が忘れられない。大会を通して打撃成績が良く、準決勝の英明戦で決勝打を放った。翌日から下級生らが部の練習後に素振りや筋トレをするようになった。

 「努力すれば結果を出せると、身をもってみんなに教えてくれた」。橘君も主将の候補だったが、「柚でよかった」と思った。

 四国地区で準優勝し、今年1月、選抜高校野球大会の出場が決まった。ついに「甲子園出場」の夢がかなったと喜んだが、3月、中止が発表された。「この悔しさは夏にぶつける」と気持ちを切り替えた。

 5月20日、夏の全国高校野球選手権大会と各地方大会の中止も決まった。支え続けてくれた両親、「絶対、甲子園に見に行くから」と高校入学時に笑顔で送り出してくれた地元の友達の顔が浮かび、涙が止まらなかった。

 しかし、主将としてチームを支えなければ、と私情を封印した。意気消沈し、練習に身が入らない部員たちを「県の大会で勝とうぜ」と鼓舞した。帰寮後の練習も休まずに続けた。

 そんな中、あきらめていた甲子園での試合が突然決まった。菊地君は「心の底からわくわくしている。自分たちのプレーで勇気を与えたい」と話した。(平岡春人)

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