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手足にまひの三男が「野球したい」 悩む母を支えた言葉

2020年1月9日19時00分

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 「野球がやりたい」

 三男の遼くんがそう言い出したのは、幼稚園の年長になって間もない一昨年の春だった。中学2年と小学5年の2人の兄も、幼いころから野球漬けの日々を送ってきたから、予想はしていた。しかし、母親の松本千世(ちせ)さん(44)=高知市=はどうやってあきらめさせるか、頭を抱えた。

 数カ月後。子どもたちが寝静まった後、居間でくつろいでいて、テレビの高校球児の姿に釘付けになった。左手にはめたグラブで捕球し、グラブを右脇に抱えてから、左手で投げていた。

 夏の甲子園に出場していた高知商業の主将、山中大河さん(19)を紹介する特集だった。生まれつき右手の指が2本だと番組は伝えていた。右手を服の袖に隠す、園児のときの山中さんのしぐさは、遼くんと一緒だった。

 遼くんは、生まれつき右手足にまひがあった。兄のまねをして、ボールを投げたり、おもちゃのバットを振ったりするようになったが、右手にはボールやバットを握る力がなかった。

 山中さんのお母さんに話を聞いてみたい。遼くんを山中さんに会わせたい。松本さんは障害児支援のイベントで手当たり次第に声をかけ、つてをさがした。

 2人との面会が実現したのは、遼くんの小学校入学を目前に控えた翌年2月。山中さんのお母さん、安見子(やすみこ)さん(48)を前にすると、聞きたいことがあふれた。

 「野球チームに入るときにはどう説明しましたか」

 「練習中はずっと親がついていましたか」

 「野球を高校まで続けられると思っていましたか」

 質問を重ねていくと、なぜか涙がこみ上げてきた。

 でも、安見子さんは「大丈夫、大丈夫」と言うばかり。そして、心配事ばかりの松本さんをなぐさめるように言った。

 「わたしも松本さんと同じように、息子を守らないかんと思っていた。でも、それは違った。遼くんも絶対に強くなる」

 安見子さんの隣では、山中さんが「いっぱい練習したら絶対、上手になるき。いっぱい練習しいよ」と、遼くんにグラブの使い方を手ほどきしてくれていた。

 安見子さんの言葉と山中さんの前向きな姿勢にふれ、松本さんは肩の力が抜けていくのがわかった。

 遼くんは昨年秋、地元の野球チームに入った。練習は週3日。懸命にボールを追いかけてグラウンドを走り回っている。

 〈経験が自信になる〉

 松本さんのスマートフォンには、安見子さんから届いたラインのメッセージが残っている。(斉藤寛子)

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