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甲子園がつないだ2人 文通130通は最愛の夫と天国へ

2019年11月26日07時00分

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 作新学院(栃木)の「怪物」江川卓が世間の注目を集めた夏だった。1973年の第55回全国高校野球選手権記念大会。まさか自分が担当したチームが、2回戦で対戦するとは思いもしなかった。

 阪神甲子園球場がある兵庫県西宮市。市立西宮高は女子生徒が長年、夏の甲子園大会の開会式で、入場行進のプラカード係を務めている。可愛い制服にひかれて入学した桜尾真由美だが、友人に誘われて応募し、校内選考を通った。そして、銚子商(千葉)を担当することになった。

 「ほとんど会話はしていないのに、私のすぐ後ろを歩くキャプテンに、なぜだか、すごくひかれたんですよね」。真由美ははにかむ。雨中の延長十二回、作新学院に1―0でサヨナラ勝ちした2回戦は吹奏楽部の合宿と重なったが、他の3試合は応援に行った。「(選手の)品定めしてるんやろ」と友人にからかわれると、「最初から決めてるわ」と返した。

 秋が深まるころ、そのキャプテンに手紙を書いた。開会式の写真を送ってくれた新聞記者から、住所を教えてもらったのだ。木川博史が家業を継いでからも、文通による交際が6年も続いた。

 約130通ずつをやりとりしたのち、79年に結婚し、木川真由美になった。2男2女を授かり、「甲子園がパパとママの仲人なのよ」と自慢した。95年に銚子商が甲子園に出場した時は夫婦で応援に出かけた。1年生部員だった長男は、アルプス席で校旗を持つ係をしていた。

 「メチャクチャいい人で、本当に幸せでした」。最愛の夫が病気で逝ったのは一昨年2月。61歳だった。ひつぎには6年分の手紙を入れた。「天国で読み返せば、きっと寂しくないから。どちらかが先に逝ったら、そうしようと約束していたんです」

 今月9日、甲子園のグラウンドを46年ぶりに歩いた。元高校球児らが青春時代の夢を追う「マスターズ甲子園」。母校の卒業生がプラカード係をしていると聞き、初めて参加したのだ。「2年がたち、ようやく、そういう気持ちになれたので。甲子園に、母校に、『ありがとう』と伝えたかった。ここが縁で、幸せな人生になりましたから」

 交際していた頃の2ショットと、家族写真が、一緒に行進してくれた。=敬称略

(編集委員・安藤嘉浩)

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