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決勝にふさわしい試合 この舞台、邪念が消えるんだよね

2019年8月22日20時09分

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 ■元広島カープ・達川光男さん

 決勝の空気はね、独特なものよ。たった2校に許された舞台じゃけえね。3年生にしてみれば、ここまで来たらもう、やり残したことはない。僕らはそうじゃった。

 広島商の3年だった1973年、春も夏も甲子園の決勝に進んだ。春は準優勝じゃったから、夏は「決勝に行くまでは負けるものか」と思っていた。でも、不思議なものでね。いざ夏の決勝の舞台に立ってみると、「勝っても負けてもここで終わり」という思いになった。それだけでね、邪念が消えるんだよね。

 大学やプロでも、大一番という試合がいくつかあった。どんな時も、変に意識するということはなかった。高校時代の経験が生きたのかな。

 履正社も星稜も、集中しているね。履正社の井上君が、初球のスライダーをホームランにした。あんなところまでよう打つのう。すごいよ。奥川君は、この世代を代表する投手でしょ? そんな彼を選抜では打てずに、「奥川君を打てなければ日本一にはなれない」と思って、必死に対策してきたんだろうな。

 僕もそう。作新学院の江川卓の球を、選抜の開会式後に初めて見た。それ以来、どうやってあの速い球を打とうかって、意識して練習していたもん。結局夏は対戦できなかったけれど。実感すること、体験することはとても大切だよ。履正社の打線には、打ち崩そうという意識の高さが見える。意識の差が結果の差。目標ありて、結果あり。そんな言葉がぴったりくるよ。

 奥川君も、疲れているだろうに、後半に調子が少し戻ったね。仲間の好守備に、あんなに笑顔で喜んで。「奥川だけのチーム」という雰囲気を醸し出さんよね。いい学校生活を送っとるのがわかるよ。甲子園で最後の1球を投げた。渾身(こんしん)の球だったね。「あとは頼むぞ」という顔でベンチに戻った。

 ゲームセット。星稜の選手は、すがすがしい顔をしておるわ。逆に履正社の選手たちはむせび泣いている。やっぱり、ここへ来るまで、相当苦しかったんだと思う。

 僕らの夏はサヨナラ勝ちで優勝。もちろんうれしかったんじゃけど、相手を思って喜びを表に出さなかった。「礼儀は鎧(よろい)、礼儀は人を守る」と教わったけえね。履正社も星稜も、選手たちが相手のスタンドを向いてお礼をしている。素晴らしいチームだわ。決勝にふさわしい試合を見せてもらった。どちらのチームも、この戦いに誇りを持って、これからの人生を送ってほしいと思う。(構成・高岡佐也子)

     ◇

 たつかわ・みつお 1955年、広島県出身。広島商の捕手で3年春に甲子園準優勝、夏に全国制覇。東洋大を経て広島カープ入り。1軍監督も務めた。プロ野球解説者など幅広く活躍中。

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