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「誰かのために」がエースの信念、こみ上げた涙のわけ

2019年8月22日20時17分

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 (22日、高校野球 履正社5―3星稜)

 北陸勢で初となる夏の栄冠に届かなかった星稜(石川)。闘い終えたエースが泣いた。負けた悔しさからではない。「誰かのために野球をやる」との信念からあふれでた涙だった。

 「もっとちゃんとしろ」。ベンチ前で敗戦に落胆していた奥川恭伸君(3年)の耳に懐かしい「檄(げき)」が届いた。スタンドには母校の石川県かほく市立宇ノ気中学校の理科教諭、福島栄一さん(41)がいた。

 小学校で野球を始めた奥川君。甲子園でバッテリーを組む捕手の山瀬慎之助君(3年)とは、小中高とずっとチームメートだった。

 わんぱくだった奥川君はよく先生に怒られた。大人の指示を聞かずにふてくされたりと、その態度がマウンドでも出た。「どこかで大人を信用できなくなっていた」

 中2のとき、福島さんが監督になった。野球経験はなかったが、手がまめだらけになるまで毎日ノックを続けた。「ここまで尽くしてくれる大人を初めて見た。先生の本気を受け取って、下手くそなノックを部員全員、全力で捕りにいった」。

 先生に報いたいと部員らは奮起し、自分たちで練習メニューも考えるように。奥川君と山瀬君の活躍もあり、全国大会で優勝した。

 星稜に進んだ奥川君は全国屈指の投手に成長。練習や試合では多くの部員たちのサポートを受けた。だが今春の選抜では本塁打を浴び、チームは敗れた。

 6月、ベンチ入りできなかった部員たちが引退試合を行った。ドリンクを作るなど裏方に回っていた奥川君は、3年生たちから口々に感謝を伝えられた。

 「絶対にこいつらを甲子園に連れていく」。そう誓った石川大会で投打に活躍した。優勝したとき、責任を果たした安堵感(あんどかん)から、大泣きした。

 甲子園は「野球の神様がくれたボーナスステージ」と思っていた。それでも、野球を捧げる「誰か」は増えていった。タイブレークの末に勝利した智弁和歌山。18歳以下の日本代表候補のチームメートの黒川史陽君(3年)が主将だった。敗れた黒川君からは「絶対に日本一を取ってくれ」と託された。

 満を持して臨んだ決勝は終盤に突き放された。この日は3年前、中学の全国大会で優勝し、福島さんを胴上げしたのと同じ日だった。甲子園に駆けつけた福島さんは「自慢の教え子。悔しいけど、全力で頑張った。感動をくれてありがとうと言いたい」と語った。

 敗戦直後は泣かなかった奥川君。恩師から「おつかれさん」と声をかけられた。「支えてくれる人、心の底から応援してくれる人がいて、野球ができる」と改めて思い、こみあげるものを止められなかった。(岡純太郎、浅沼愛)

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