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「代表より履正社の方が苦しかった」主将、解き放たれた

2019年8月22日20時20分

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 (22日、高校野球 履正社5―3星稜)

 七回、同点とされてなお2死満塁のピンチ。履正社内野陣がマウンドへ。黄色く染まる星稜応援団の声援が勢いを増す。「点は取られてもいい。思い切って投げろ」。捕手で主将の野口海音(みのん)君(3年)は継投した後輩投手を好リードし、後続を二飛に打ち取った。

 1年秋からマスクをかぶってきた攻守の要。だが、3年ぶりの夏の甲子園出場でも、自信を持てないままだった。「野球をやってて、この1年が一番面白くなかった」

 小1からソフトボールを始め、中学で硬式野球に。中3で15歳以下ワールドカップ日本代表の主将を務めた。12カ国・地域の中で、日本代表は銀メダルを獲得した。野口君は「日本代表の主将よりも、履正社の主将の方が苦しかった」という。

 履正社の部員は82人で、ここ10年で最多だ。選手層が厚くなったものの、メンバーと控え選手との間に壁ができた。「他の学校ならレギュラー級。サポートにまわることに納得できない人もいた」。副主将の桃谷惟吹(いぶき)君(3年)は話す。

 昨夏の経験者が多く残り、甲子園に出るのは当然で目指すのはその頂点だった。だが、今春の選抜大会1回戦で、好投手の奥川恭伸君(3年)を擁する星稜と対戦。3安打17三振で完封された。「打倒星稜、打倒奥川」。新たな合言葉が生まれ、結束は強まると思っていた。

 「もっと声出そうや」。野口君が練習で声を張り上げても、反発する部員がいる。チームをまとめるためにはどうすればいいか、練習で体は疲れているはずなのに考え込んで眠れない日々を過ごした。選抜後の春の大阪府大会は準々決勝で敗退。野口君は3年生を集めてミーティングを開いた。「今のままじゃ夏は勝てん。真剣になろう」

 ベンチを外れた部員には、グラウンド整備や道具の準備をすることに不満を抱く人もいた。「ありがとう」。野口君は率先してお礼の言葉を掛けるようになった。「海音がお礼を言ってくれるだけで空気が和らいだ」と、部員で応援団長の久保田瞬君(3年)は言う。

 夏の大阪大会で勝つたび、スタンドの控え部員からの声援も大きくなった。チームの一体感も高まっている手応えがあった。

 一進一退の攻防となった星稜戦。八回、野口君が勝ち越し打を放つ。打った直後、仲間に向かって右腕を突き上げたまま一塁へ駆けた。今大会は3回戦から打順を一つ下げて7番に座っていた。打線が全試合で2桁安打を記録する中、実力を発揮し切れずにいた。

 だが、最後の最後に主将が意地の一振りを見せた。アルプス席で見守った志水渚君(3年)は「他の誰かが主将だったら、もっとバラバラになっていたかもしれない。海音が主将で良かった」。

 春の雪辱を果たしての日本一。目標を完遂した履正社の選手は、勝って泣いた。「みんなに恩返しできた」と野口君。苦しみから解き放たれたように、何度も夏空を見上げた。(山田健悟)

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