ライバル校の主将になった弟へ ガチンコで後輩と戦って
(17日、高校野球 星稜4―1智弁和歌山)
■智弁和歌山・上原佑斗内野手
1学年下の弟、拓海のいる市和歌山は最近6年間、夏の甲子園出場を分け合うライバルだ。2人ともメンバーに入った今春の選抜では、ともに8強に入った。
今春の県大会決勝で直接対決が実現した。僕が三塁側ベンチから一塁コーチスボックスに向かっていると、外野の守備に向かう弟とすれ違った。「速く走れ」とわざとまじめな顔で言うと、弟は笑顔で走っていった。本当はうっとうしい、と思ったらしいけど。結果は智弁和歌山の九回逆転サヨナラ勝ちだった。
弟は相談事があると、僕がいる風呂に入ってくる。夜は家の前でときどきキャッチボールをする。ライトをつけても暗い。「見えやんって」「今の回転どうやった?」とか言い合いながらしっかり投げる。パン、パンと乾いた音が響く。小さい頃からだんだん弟の球が速くなっていくのを感じながら、続けてきた。
今夏、弟は和歌山大会準々決勝で負け、僕は甲子園に来た。試合に出場する機会はなかった。星稜戦前、弟は「ヒットを打ってほしい」と言ってくれたのに。チームは一つになって戦えたと思うけど、僕は悔しかった。
弟は新チームから主将になった。高校野球はいいもんなんで、悔いのないようにやってほしい。そして、ガチンコで僕の後輩たちと戦ってほしい。(内田快)