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「練習減=うまくなれない」は× 時短は良いことずくめ

2019年7月14日19時37分

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 フリー打撃11分 内外野別ノック10分 バント練習7分……。

 福岡県中西部の県立校、春日の野球部。6月のある日、練習後に部員に配られた「練習プリント」には、B4判の紙に練習試合などで見つかった課題を始め、翌日の練習メニューが分刻みに記されていた。

 練習が終わったのは完全下校時間の午後7時30分直前。部員はプリントを手に、急いで着替えて下校していた。

 この後、部員たちは自宅などで内容を確認してメニューを把握し、自身やチーム全体の動きを考える。「授業が終わったらグラウンドへダッシュです」と捕手の坂口博亮(ひろあき)君(3年)。放課後の練習でイメージを行動に移し、気になる点があれば、考えて修正。プリントの振り返り欄に記入し、次の練習に生かす。そのサイクルを繰り返す。

 平日の練習は2~3時間。トンボかけも走りながらする。進学志望の生徒が多く、限られた時間を最大限生かして部活動と勉強を両立させるのが狙いだ。八塚(やつづか)昌章監督(51)は「準備野球」と名付けている。「あらゆる場面で考えること。しっかり準備するからこそ成功する」と話す。一昨年は福岡大会で8強入りした。

 エースの坂元創(そう)君(3年)は最速146キロの速球を持つ。高校入学時は130キロに届かなかった。準備野球で集中力が養われ、密度の濃い練習ができていることが成長の一因だと考えている。

 例えば休憩も分単位で、素早く気持ちを切り替えられるようになった。「練習量が豊富な私学の強豪校には、まともに対戦しても勝てない。素早く動いて、無駄な時間をつくらないように心がけている」と話す。

 働き方改革に注目が集まる中、高校野球の現場でも選手・指導者の負担軽減や効率的な練習を求めて工夫を凝らす動きがある。

 スポーツ庁は昨年3月、運動部の活動について、総合的なガイドラインを策定した。練習のし過ぎの是正が目的の一つで、休養日が週2日以上、活動時間の上限が平日2時間、休日3時間程度などとの基準が示された。高校にも原則適用するとしている。

 春の大阪大会で初優勝した大商大は、昨夏の新チーム始動時から1日の練習時間を2時間弱短くし、平日は午後7時までとした。エースの上田大河君(3年)は「最初は『練習量が減る=うまくなれない』と思っていた」と振り返る。

 大阪桐蔭や履正社といった全国級の強豪の選手と比べて、高橋克典監督(34)は選手たちの体作りの強化の必要性を感じていた。だが、新たに契約したトレーナーからの答えは、「食事や運動はもちろんだが、休息を重視してほしい」。新チーム発足を機に、練習時間の短縮に踏み切った。

 「体を大きくする」というチームの目標を掲げつつ、選手たちには練習・食事・休息のバランスを考えさせ、練習を短くする代わりに最低7時間の睡眠を確保するよう指導した。

 ひと冬越えると、10キロ近く体重を増やした部員も出てきた。上田君も目標がかなったと感じた。マウンドでは足腰の踏ん張りが利くようになり、直球は最速で148キロに。球速の上昇にあわせて変化球のキレも増した。この夏、大阪で屈指の右腕との評価を受ける上田君は「練習時間が短くなって、集中して練習にも取り組むようになった。疲れも残りにくくなり、今思えば良いことずくめです」と話す。

 夏の甲子園に2度出場した豊田大谷(愛知)は、けがした選手が無理に練習しないよう、スマートフォンの体調管理アプリを役立てている。

 アプリでは、1日の目標や睡眠時間などを入力できる。自分と向き合う時間を作ってほしいと思い、崎久保宏憲監督(34)が昨年4月に導入した。当初「野球ノート」を想定したが、部員50人分のノートを持ち歩き、授業の合間などに読んでコメントを書くことを毎日続けられるか迷っていたときに、アプリの存在を知った。部員も自分も続けやすいのではないかと考え試しに使ってみると、選手はこまめに入力し、自分も無理なく確認できた。対面では言いにくい本音をスマホの画面を通じて伝えあうこともあった。

 なかでも一人一人のけがの状況を把握できるのが大きいという。アプリにはけがをした部位の痛みを10段階の数値で入力できる。練習で元気に見えた1年生がこのアプリで肩の痛みを訴えたことで、けがに気づいたこともあった。

 「子供たちは朝起きて一番にスマホを見る。監督に『痛い』と直接言うよりも伝えやすいのではないか」と監督。この情報ですぐに練習を軽くしたり、休ませたりできる。試合での投手起用の参考にもしているという。(棚橋咲月、山田健悟、村上友里)

     ◇

■部活動問題に詳しい内田良・名古屋大大学院准教授(教育社会学)の話

 部活動の原点は、生徒がスポーツに触れる機会保障だ。今の部活動の多くは勝利至上主義で、子どものけがや教員の無理の上で成り立っている。この状況は非常にまずい。スポーツ科学の観点からも、休みを適度にとった方が強くなる。勝つためにもきちんと休むことが大切だ。草野球のように楽しむことに重点を置いた部活動があってもいいのではないか。部活動は規範意識を育むなど、教育上いい効果がたくさんある。学校のやること、教員のやることをいま一度見返し、子どもも教員も心身とも健康なまま部活動をしてほしい。

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