スポブルアプリをダウンロードしよう

  • Sportsbull Android App
  • Sportsbull iOs App

すべて無料のスポーツニュース&動画アプリの決定版!

QRコードを読み込んでダウンロード

Sportsbull QRCode

野球続ければ「最悪死ぬ」ならばコーチとして最後の夏へ

2019年7月14日08時00分

シェア

 「本番の相手投手は牽制(けんせい)がうまい。今日のままだと刺されるぞ」

 追手前高校(高知市)の野球部グラウンド。試合形式の実戦練習を終え、集まってきた選手を前に3年生の高橋奏太(かなた)君(18)は手厳しい。

 高橋君は現役の選手ではない。だが、練習メニューや試合での選手起用を提言し、ノッカーも務める「監督代行」だ。

 今夏は選手としての最後の夏になるはずだった。身長162センチで体重は55キロと小柄だが、捕手や内外野の守備を器用にこなし、新チームでは副主将に抜擢(ばってき)された。

 だが昨年9月、練習試合の帰り道で大けがを負った。下り坂を自転車で走行中にバランスを崩して転倒した。倒れ込んだ際、ハンドルがみぞおちに食い込んだ。病院で検査を受けると、膵臓(すいぞう)と脾臓(ひぞう)が損傷していた。

 すぐに入院し、脾臓や膵臓の一部を取り除く手術を受けた。手術の1カ月後、医師に聞いた。「野球は続けられますか」。医師は首を振った。免疫力は回復しなかった。出血すると、「最悪の場合は死ぬ」と告げられた。

 小学3年から続けてきた野球だった。現実をすぐに受け入れられなかった。

 2カ月の入院生活を終えて野球部に復帰した。試合を締めるクローザーなら打撃や走塁でけがをして出血することもないと志願した。常広直樹監督(39)は受け入れた。だが、利き手の右腕も転倒事故の直前に脱臼し、なかなか完治しなかった。

 この状態でクローザーをめざすのか。チームのレベルアップにつながるのか。悩んだ末、監督に伝えた。「選手はもうあきらめます。サポートに回ります」

 高橋君は学生コーチに指名された。常広監督は昨年末から指導方法を刷新し、選手の自主性を重視していた。練習の計画や内容も選手たちに決めさせた。こんな状況のなか、誰よりも大きな声で仲間を鼓舞する高橋君は適任だった。

 練習中は選手の動きをチェックし、アドバイスする。筋力トレーニングではそばについて最後の一秒まで体を追い込む。あいさつは大きな声を出す。移動は全力で走る。野球部員として必要だと思うことは、進んで指摘することにした。

 だが当初は空回りだった。高橋君の一方的な「指導」に一部の選手は反感を持った。チームも春の県予選の初戦で敗退するなど伸び悩んだ。高橋君は「コーチをやめたい」。そう漏らすようになっていた。

 今年4月、野球部のLINEグループに打ち込んだ。「おれのダメなとこ、変えた方がいいところあったら言って欲しい」。複数の選手から「意見を曲げないところ」「相手を納得させないままやらせる」と返信があった。

 高橋君は「考えを押しつけられたら誰でも嫌だよな」と悟った。命令口調から提案するような言葉遣いに改善する努力をした。

 選手も高橋君の気持ちは理解していた。主将の岡本真太朗君(3年)は「一生懸命に役割を果たそうとし、熱くなっていた。チームを盛り上げる必要な存在」と話す。常広監督も「私の代わりになってくれている。雑用係ではなく、立派なコーチ」と話す。

 夏の高知大会では背番号を付けてベンチ入りし、試合前のノックと三塁コーチを務める予定だ。「試合に出られなくても三塁コーチや声出しで活躍できる。試合では、相手が嫌がるほどの元気を見せたい」(加藤秀彬)

話題の記事

スポーツブルアプリアイコン