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朝6時1人で練習、放課後は生徒会長 元ちゃんの野球

2019年7月14日08時00分

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 6月20日、午後8時半すぎ。練習を終えた奈良県大和高田市の高田商野球部の2、3年生51人が、校舎の玄関前に集まった。遠くからカエルの鳴き声が聞こえる中、赤坂誠治監督(42)が夏の大会のメンバーを読み上げた。

 「津田、岩井、大住――」

 ベンチ入りできる選手は20人だが、呼ばれたのは半分の10人だけ。「残りの期間、もう少し見てみたい人が多いので、例年より少ないです」。残り10人を加えた最終メンバーは、大会直前に発表される。

 21人の3年生のうち、呼ばれたのは6人だった。「やっぱり大住は入るな」。主将の大住康真(こうま)君の名前を聞いて、桂元輝(げんき)君は思った。もう一人の捕手の名前はなかった。「まだチャンスはある」

 桂君と大住君は、同じ捕手。帰り道も同じ。「アラジンの映画、見に行きたいなあ」。この日も、いつもの道を、いつもの話をしながら自転車をこいだ。メンバーの話はしなかった。

     ◇

 桂君は生徒会長をしている。2年生の11月に自ら立候補して当選した。母の希美子さん(48)は「生徒会をやる」という突然の報告に戸惑った。「野球か生徒会、どちらかをあきらめたり、迷ったり、傷つく姿を見たくなかった」

 生徒会の仕事は、想像以上に忙しかった。3年生を送る会で流すスライドショーの作成など、学校行事の準備で放課後は遅くまで残った。野球部の練習に間に合わない日もあった。

 その穴を埋めようと、毎朝6時に一人、グラウンドに来て練習をした。目覚ましが鳴るのは午前5時。起きた時につらくても、自転車をこぎ出せばしゃんとした。春の大会でベンチ入りできなかった悔しさも、自分を駆り立てた。

 部の朝練は自由参加だ。多くの部員は午前7時半ごろに集まり始める。みんながジャージー姿で練習する中、ユニホームに着替えて練習をした。

      ◇

 6月25日午後6時。橿原市の佐藤薬品スタジアムでの記念試合は、桂君を囲む円陣から始まった。桂君の「気合入れてー!」の声に、みんなが「気合入れてー!」と復唱する。

 毎年、夏の大会前、3年生だけでする試合だ。公式戦と同じ球場に、審判員、電光掲示板にも名前がともる。公式戦との違いは、アナウンスがないだけ。選手によっては、佐藤薬品スタジアムの土を踏む最後の機会になるかもしれない。

 「元ちゃーん!」。ベンチから声援が飛んだ。三回表、1死二塁。内角低めの直球を捉えた。ライト前に抜けると、ほっとした。遠くから聞こえる「ナイスバッティング」の声に、顔がほころんだ。

 3年生全員がベンチに入り、戦うのはこの日が最初で最後。試合中、何よりもうれしかったのは、3年生の投手5人全員の球を受けたことだ。試合前からずっと楽しみにしていた。

 「すごくうれしかった。幸せだった」(佐藤栞)

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