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亡き父へ「ついに打ったよ」 仏壇に置いたHRボール

2019年7月11日21時00分

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 人生で初めて柵越えのホームランを打った。昨年10月、由利高(秋田県由利本荘市)のグラウンドで行われた練習試合。高めの直球に、由利の伊藤瞭(りょう)君(3年)の体は勝手に反応した。これまでと感触が違う。打球から目を離せない。レフトのホームランラインを超えた。やった。塁を回りながら、「よっしゃー!」と叫んで拳を突き上げようとした。いや、あまり騒ぎすぎるとみんなに引かれてしまうかも。練習試合だし……。一瞬考えて、腰元で静かに拳をにぎりしめた。

 ホームにかえると、三塁側ベンチの仲間はハイタッチをして喜んでくれた。「やったな」「おめでとう」。三塁コーチャーの君島大智君(2年)が、相手の選手からホームランボールをもらってきてくれた。晴れやかな充実感。でも、別の思いもこみ上げた。

 もう少し早く、打てていたらなあ。

     ◇

 ほんの3週間前のことだった。仕事でいつもより遅く深夜に帰ってきた母にたたき起こされた。「お父さん息してない」

 慌てて向かいの部屋に入った。救急車が来るまでは応急措置をしなければ。心臓マッサージのやり方は、いつかの保健の授業で習った。ただただ無心で繰り返した。間に合わなかった。

 心臓が元々弱かった。母が帰宅する2時間ほど前には亡くなっていたらしい。夜10時ごろか。父は何をしていたのだろう。物音はしなかったと思う。

 普段は電車通学だが、その日は父の車で学校まで送ってもらった。仕事がいつもより早いから送れるよ、と。特に話題もなく、車中は静かだった。夕方帰宅すると、父は既に酒を飲んでくつろいでいた。

 ただいま。おかえり。

 記憶に残る、最後の会話だ。

 あまりに突然で、父がもういないという実感がない。家に帰って駐車場に父の車があるのを見ると「あ、父さん帰ってるんだ」と反射的に思う。1カ月ほどは、そんな状態だった。

 小学2年で野球を始めてから、父とは野球のことばかり話してきた。父自身は野球をやっていたわけではないのに。

 試合で打てば、一番喜んでくれた。それがうれしくて、練習に身が入った。もっと打てるようになりたい。父の存在は原動力だった。いつかはホームランも、とも思った。

 「ついに打ったよ」。少し遅れてしまったが、ホームランボールは仏壇に置いた。

     ◇

 先月下旬。最後の夏の背番号が安保(あんぼ)天志(たかし)監督から発表された。グラウンドの本塁周辺に部員が集まる。自分の名前が呼ばれるとしたら、きっと15番以降。16番は1年生。17番、18番、まだ呼ばれない。19番も1年生……。

 「ベンチ、入れなかったんだよ」。仏壇に手を合わせた。父が亡くなってからも精いっぱい頑張った。むしろ野球を頑張れる理由になった。ただ力が足りなかった。「ごめんね」

 試合前のノッカーには登録された。選手が練習だけに専念できるように、全力でサポートしたい。そして一つでも多く勝ってほしい。「ベンチ入りできなかったからと腐ったらだめだ。自分の責任を果たしなさい」。父ならそう言ってくれると思う。

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