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30分じゃ足りないドラマ 熱闘甲子園・ヒロド歩美さん

2019年8月21日14時15分

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 グラウンドで白球を懸命に追う高校球児たち。その姿を伝える立場の人にとっても熱い夏です。全国選手権大会の期間中に連日放送の「熱闘甲子園」でキャスターを務める朝日放送テレビ(大阪)アナウンサー、ヒロド歩美さん(27)に、どんな思いを込めて高校野球の取材に携わっているか聞きました。

     ◇

 今年で入社6年目で、甲子園での取材も6回目です。たった6年でも本当に濃い。高校野球がない夏なんてもう考えられません。

 私にとって去年の夏は大きなターニングポイントになりました。それは熱闘甲子園での宿舎取材です。負けたチームの宿舎で試合を終えた球児たちの悔しい思いや吹っ切れた思いを感じる。「本当に素直で素敵だなぁ」とはまってしまいました。

 オンエアで披露する時間が限られてしまっても、私のインスタグラムで発信しています。だから球児たちも「インスタ載りますか?」ってそわそわしてくれるのがうれしい。インスタだと自分で考えに考えて発信できるので、ディレクターのようにも動けます。勝ったチームの宿舎取材に行ったのは1回だけ。金足農(秋田)が地元からお米をたくさん送ってもらったと聞き、あきたこまちが山積みの映像が欲しいと思った。熱闘甲子園の編集長に直訴したら、「すぐ行って」と。一昨年までは宿舎取材にあまり行けませんでした。取材のコツやリズムをつかんできて、スタッフに主張できるようになってきました。

 熱闘甲子園では、古田敦也さんと一緒にお仕事をさせていただいて4年目です。役割がはっきりとしてきました。技術的に優れた選手は古田さんが注目してくださるので、私は球児の思いやサポートしている方の思いといったヒューマンドラマを意識して取材しています。去年の夏で言うと、古田さんが金足農の吉田輝星投手のすごさを技術的な観点で解説する。私は控えの2年生たちが可愛くて、どんな風に先輩をもり立てたのかとかエピソードを追いました。

 球児に取材していると、姉の感覚というか親戚というか、「大丈夫かな」と心配になります。最近の高校生は、こちらから話を一度聞けば次からは飛びつくかのように懐いてくれるので、そんな距離感を作ってくれるのがすごくうれしい。大体みんな卒業したら私にはタメ口(笑)。これまで取材した選手が大学でプレーしていますから、神宮球場にも行けばみんながいるので楽しいです。

 もし、朝日放送(ABC)に入っていなければ、私は野球と縁がなかったです。小学校から12年間女子校に通ってヨットで五輪を目指していた時期があって、甲子園には行ったことがなかった。高校1年の時、大親友が「頼むから見てほしい番組がある」と言ってきたのが熱闘甲子園。初めて見た佐賀北の試合で感動して、それが熱闘との出会いです。

 甲子園へ初めて行ったのはABCの内定者時代にあった高校野球研修です。ブラスバンドを始めとした応援の雰囲気に鳥肌が立ったのを覚えています。入社時はプロ野球12球団すら言えなくて、めちゃくちゃ怒られました。

 だから自分ができることは野球の技術面に注目するよりも球児に寄り添うことだ、と思いました。プロ野球中継のリポートでは作戦などを知っておかないといけませんから、スコアとかも勉強して高校野球取材にも生かしています。甲子園では古田さんが隣で解説してくれます。クイズを出しながら。

 私が技術面について言ったところで視聴者の方には全く響かないだろうし、私が球児の立場だったら「野球経験もないのに……」と思う。取材では絶対言わないように心がけています。ただ、精神的な部分や周りのサポートとかには歩み寄れるかなと考えています。

 ABCと言えば高校野球。様々な先輩方が教えてくださって最強の環境で熱闘キャスターをやらせてもらっているんだなと思います。「高校野球はドラマがすごい」と一番伝えてくれたのが、清水次郎さん(元アナウンサー)です。

 最初の高校野球研修で、地方大会を見ながら妄想のドラマを言ってくれました。「いまエラーしたよね。でもこれ取り返さなきゃと思って次バッターボックスに立つから」と。次郎さんは高校野球の魅力をそういう部分に見いだしてる方で恩師です。技術とか作戦とかでアプローチされていたら、ちょっとした拒否反応が出たかもしれない。

 ただ、私が野球の実況をする機会は、もうチャンスを逃したかな。挑戦してみたかったですけど、相当な覚悟と時間が必要でしょうし、高校野球に対して失礼かもしれない。今はプレーの裏側にとりこになったのでそちらを追い続けたいです。

 甲子園で取材した高校は、卒業式にも仕事の合間に時間を作って行きます。今では取材する高校のリストを書いて、熱闘のスタッフたちに伝えて動いています。大会期間中はえげつないスケジュールですけど、プライベートで甲子園にいるんだというくらいの気持ちです。だから夏だけじゃなく、その後も追いかけたくなる。こんなに野球にはまるなんて思ってもなかったし、周りも驚いてます。

 熱闘甲子園は、みんなで作り上げるという雰囲気を強く感じる番組です。取材してきてと言われて、「はーい」で終わるんじゃなくて、「こんなの見つけてきました、どや!」という感じで出します。古田さんからは「あれ聞いてきて」などと色々なミッションを出してくださいます。技術論について球児に聞くときは、「古田さんからの質問なんだけど」と伝えています。

 感動的だったのが、昨年夏の智弁和歌山です。監督だった高嶋仁さんは林晃汰君(現広島)をすごく可愛がっていたのを知っていたから、「2人のインタビューが撮れたらいいな」と思っていました。林君は「監督は絶対ツーショットしないです」と言っていたのですが、撮らせてもらえた。そこで高嶋さんが「僕にとって林は宝です」みたいなこと言ったんです。今年の春、カープの取材へ行ったとき、林君が智弁和歌山OBから「監督が宝って言ったのすごいな」と言ってもらえたと喜んでいて。とても貴重な姿を見ることができたんだと思い、感動しました。

 私が宿舎取材から帰ると、古田さんには「良い顔してる」と言われます。充実した取材ができて、球児たちから「栄養剤」がもらえる。私は「熱闘甲子園を2時間番組にすべきだ!」と言い続けています。30分間じゃ全然足りません。

 高校野球にはドラマがあって多くの人をとりこにしているのに、近頃は「野球離れ」と言われています。野球の魅力に気づいてもらうにはどうするかを考えつつ、例えば野球を始めようかどうか迷っている子に背中を押せる存在になれたらいいですね。高校野球ファンがプロ野球も好きだと限らないのは、ひたむきなプレーや球児が抱えている思いにとりこになる人が多いのかな。高校野球の魅力の一つは、人と人との関わり合い。それが第三者の気持ちを動かすのかな、と。

 球児には100回も101回も関係ないですから、球児たちの気持ちに寄り添いたいです。より多くの高校へ行ってたくさんの球児たちに会いたい。

 負けてしまったけど清々(すがすが)しい顔をしているチームもある。やり切ることってすごいんだって思うし、出し切れずに後悔することの方がつらい。これまでの努力を全部出し切ってください。完全燃焼している姿を見たいから。(聞き手・辻健治)

     ◇

 <ひろど・あゆみ> 1991年、兵庫県宝塚市生まれ。小林聖心女子学院高(兵庫)、早稲田大卒。2014年入社。現在は、朝日放送テレビの報道番組「キャスト」の月曜レギュラーを始め、テレビ朝日系列の「サンデーLIVE!!」や「そんなコト考えた事なかったクイズ! トリニクって何の肉!?」などに出演。

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