メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

「鬼」の30年前→「ノリ」の平成最後 東邦Vの変化

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • メール

2019年4月4日07時30分

 第91回選抜高校野球大会は3日、決勝で東邦(愛知)が習志野(千葉)を6―0で破り、平成元年(1989年)の61回大会以来、30年ぶりの頂点に立ち、平成最初と最後の優勝校となった。

 東邦の3番石川昂弥(たかや)君(3年)の打球がバックスクリーン右に伸びていく。一回、1死一塁。それを見ていた吉納(よしのう)翼君(2年)は確信した。「今日は絶対に勝てるな」。2死後、6番の吉納君は右翼線へ適時三塁打を運ぶ。「あのホームランで本当に楽になって打てた」

 勢いに乗ったら、手がつけられない。これが今の東邦のチームカラーだ。象徴は、2016年夏の第98回全国選手権大会2回戦、八戸学院光星(青森)戦。七回から7点差を追い上げ始めると、ベンチとスタンドがお祭り騒ぎのように盛り上がった。最後は逆転勝利。そんな光景をみて東邦を選んだ選手もいる。

 1989年、平成最初の選抜を制したチームは、「鬼」と呼ばれた阪口慶三監督(74)に鍛え上げられた。当時はコーチで、4日に60歳になる森田泰弘監督は、「非常に厳しい指導だった」と振り返る。

 今は少し違う。極端な上下関係を嫌う高校生の気質を踏まえ、練習の激しさは残しつつ、部の雰囲気は柔らかい。監督の妻が切り盛りする焼き肉店は、憩いの場だ。二塁手の杉浦勇介君(3年)は、うれしそうに言う。「監督の焼き肉は、本当にうまいんです」。控えの土屋大貴君(2年)は3月に招かれた。「入学前は怖かったけど、実際は違った。コミュニケーションがとりやすくなった」と語る。「監督にほめられたくて。野球がうまくなるのが楽しい」と杉浦君。そんな空気に憧れ、能力が高くて向上心のある選手が集まり、再び頂点を狙う下地が整っていった。

 そして、巡ってきた「平成最後の選抜王者」になるチャンス。ここぞとばかりに、あちこちで優勝を宣言する森田監督から「おまえたちなら出来る」とあおられた。これがノリのいい選手たちに合った。

 この選抜は全5試合で先制し、一度もリードを許さずに走りきった。紫紺の大旗を手にした石川君は言う。「1試合1試合、最初から最後まで自分たちの野球ができた」。のびのびと打ち、とことん楽しむ。東邦らしさを貫いた先に、「平成最初と最後の甲子園で優勝」という快挙は待っていた。(小俣勇貴)