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京都)選抜開幕 府勢2校、仲間の思い背負い行進

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2019年3月24日03時00分

 平成最後の高校野球の選抜大会が23日、阪神甲子園球場で始まった。府内からは龍谷大平安(下京区)と福知山成美(福知山市)が出場する。両校は開会式で2万8千人の歓声を受けながら行進した。ベンチ入りできなかった仲間の思いも背負って。

 ■龍谷大平安 学生コーチ

 「イチ、イチ、イッチニー」。龍谷大平安の選手18人はかけ声に合わせ、大きく腕を振った。水谷祥平主将は「よし、やってやろうという気持ちになった。昨夏の甲子園とは違い、リーダーとしての責任を感じる」と気を引き締めた。

 プラカードを手に先導したのは白浜海大(かいと)君だった。白浜君は昨秋、選手から学生コーチに転じた。5年前の選抜で優勝した試合をテレビで見て憧れ、龍谷大平安に行こうと決めた。入学後、中学と同じ二塁手の練習をしていたが、守備も打撃も「かなわない」と思った。ボールボーイや塁審をしながら、「自分は何をやってるんやろう」とめげることもあった。

 原田英彦監督(58)は昨年8月、新チームになって最初のミーティングで、学生コーチを募集すると告げた。チーム初の試みだ。ベンチ入りできない部員にも役割を与えて責任感をもってもらい、チームの一体感を生むのが狙いだった。

 白浜君は迷った。「自分の実力では厳しいこともわかるが、両親にはプレーしている姿を見せたかった」。電話で相談すると、父母ともに「周りのことは気にせず、自分で決めなさい」と話した。ミーティングの1週間ほど後、学生コーチを志願した。

 監督やコーチの指導内容をノートに書きとめ、インターネットでプロの練習動画を見て学ぶ。打撃練習では、中堅からスイングを見て、気づいた点を指摘する。自主練習ではティー打撃の球出しをし、ノックも打つ。水谷主将は「全員の自主練が終わるまで付き合ってくれる。いつも支えられている」と感謝する。

 捕手の多田龍平君は、敗れた昨秋の府大会準決勝で、投手の球をそらして失点。敗戦後、自主練習に付き合ってもらった。ワンバウンドの球を投げてもらい、そらさないようにする練習だ。多田君は「あの練習で変われた。選抜で白浜を喜ばせられるように頑張りたい」と話す。

 「もっと支え、一緒に日本一に」。白浜君はそんな思いで先導した。(川村貴大)

 ■福知山成美 記録員

 福知山成美でかけ声を出したのは、後方にいた内野手の西山竜矢君だ。「ここにいない仲間の分まで堂々と行進しようと思った。思ったような大きな声を出せた」と笑みを浮かべた。

 記録員としてベンチ入りする渡辺翔太君は、宿舎のテレビで見届けた。「かっこよくて、誇らしかった。自分にできることをやり、勝利に貢献したい」

 渡辺君は野球部の3年生28人のうち唯一の商業科。高校に入って簿記2級のほか、電卓やワープロの資格も取った。電卓で打率や防御率を素早くはじき出す。

 秋の府大会の1次戦までベンチ入りしていたが、2次戦からは外れた。その後、声の大きさと盛り上げのうまさを買われ、試合中に応援団長をしていた。中学時代は捕手で、打者のデータ分析は得意。初めての相手でも序盤で特徴を見極め、仲間にどう打つべきかを助言している。

 井本自宣(さだよし)監督(45)は今月初め、「記録員をやりたい人は言ってくれ」と告げた。やりたいが、仲間から「応援団長を続けて」と言われているので悩み、小学生のときのチームの監督に相談。「甲子園のベンチからの景色を見られる球児はごく一部やぞ」と言われ、記録員になろうと決めた。

 記録員になってすぐ、渡辺君はSNSで助言を求めた。その相手は昨年、甲子園で春夏連覇したときの大阪桐蔭の記録員だ。面識はない。それでも相手をどう分析するかの基礎を教えてくれた。

 打者ごとに「変化球×」「選球眼○」といった特徴をメモに書き込む。相手の打順が一巡すると、捕手に内容を伝える。「この打者はストレートに合っている」「変化球を狙っているぞ」というように。そんなやり方を身につけた。

 報告を受ける捕手の原陽太(ひなた)君は「特徴を手早く教えてくれるのでとても助かる」。データを生かして勝ち進み、感謝の思いを伝えるつもりだ。

 仲間を盛り上げる地声の大きさは、渡辺君の大きな持ち味。「日本一、声を出す記録員になる」(高橋豪)