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(スポーツ好奇心)独自ルールでリーグ戦 もう一つの高校野球?

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2018年12月5日15時43分

 高反発の金属製バットは使用禁止、投手は球数制限に加え、肩やひじにより負担がかかる変化球も禁止――。大阪府内の高校の野球部が、独自のルールでリーグ戦を行っているという。甲子園を目指す球児たちが、なぜわざわざ違うルールで真剣勝負をするのだろう。試合をのぞいた。

 11月中旬、リーグ戦を勝ち抜いたチームによる決勝が大阪府河南町であった。グラウンドには、高校野球ならではの「カキーン」という金属製バットの音は響いていない。代わりに聞こえるのは「コン」というこもった音だ。

 主なルールは、使用バットは木製または低反発の金属製▽五回まではバント禁止▽1投手の1試合での球数は1年生80球以下、2年生100球以下▽投球練習時は登板時のみ5球、それ以外は3球▽スライダー、フォーク、スローボールの投球は禁止、などだ。通常の試合とは大きく違うが、すべて、選手の将来を考えてのことだという。

 2015年に始まって4年目の今年は、10校が参加。呼びかけ人の阪長友仁(さかながともひと)さん(37)は、新潟明訓で夏の甲子園に出場し、立教大野球部でも活躍した野球人だ。その後ドミニカ共和国などで世界の野球を学び、全国各地で海外の野球指導法のセミナーなどを開催している。ドミニカでは目先の勝利よりも、選手の将来を優先させる指導を目の当たりにするなど、経験の中で感じてきた問題意識を元に、選手の将来につながることを考え、たどり着いたのが独自のリーグ戦だ。

 参加するのは普段は府高野連などが主催する大会に出場する選手たちだが、通常の公式戦や練習試合とは違うルールを設定する。その狙いについて、阪長さんは「打者は芯でとらえないとちゃんと飛ばない木製で打てるようになる過程を体験し、学ぶ機会にしてほしい。投手も、制限された投球数の中で無駄な球を減らしながら、直球主体で思い切って腕を振ることを体験して自信につなげてほしい」と話す。

 全試合が終了すると、優勝チームに記念Tシャツが贈られ、優秀選手が表彰された。打率、長打率、防御率、本塁打の部門で4冠に輝いたのが、門真なみはやの道幸(みちゆき)良人(はると)投手兼内野手(2年)。初参加の昨年は、木製バットでボールを「芯でとらえる」感覚をつかめず、3安打に終わった。だが、木製バットで練習を積んで臨んだ今年は21安打。「正しいフォームじゃないと飛ばないので、金属よりも『技術で打った』という感じがして楽しい」と話す。自信も手に入れ、高校入学時は考えていなかった「大学で野球を続ける」という目標も見えてきたという。

 トーナメントではなく、約2カ月間をかけてのリーグ戦にする利点について、阪長さんは「勝負へのこだわりを持ちながらも、選手も指導者も、反省をすぐに次に生かすことができる」と説明する。大阪学芸の赤松辰希主将(2年)は「前向きに試合に臨める。チャンスがまたあるので、失敗をしても上を向き、取り返そうと思える」と話す。例えば、選手が三振をすると、ベンチから「三振オッケー!」と声がかかり、すかさず指導者が次の打席へ向けた助言をしていた。ミスをしても、あからさまに肩を落とす選手は見当たらなかった。

 試行錯誤で得る自信、緊迫する場面で逃げずに腕を振る勇気、失敗をしたあとの切り替え方――。このリーグ戦には、学ぶための材料がたくさん転がっていた。そして何より、選手たちが心から野球を楽しんでいた。一発勝負の戦いではないからこそ、野球は本来楽しいものという、原点にも帰れる取り組みだと感じた。(高岡佐也子)