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長野)マスターズ・女子…野球再生に新しい風

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2018年12月1日03時00分

 「ピンチはチャンス」――。スポーツ現場でしばしば語られる格言を地で行く動きが、今年は県内の野球界で具体化した。マスターズ甲子園での開花、そして女子野球の芽生えだ。

 11月11日、秋晴れの阪神甲子園球場。一塁側ベンチで長野県選抜チームは沸き返っていた。元高校球児たちが夢舞台で親善試合をする第15回マスターズ甲子園で、長野県選抜チームは奈良県代表に7―0で勝ち、初陣を飾った。

 「最高のチームになりました」と松商学園OBで選手兼任の深沢友和監督(42)。場内通路を引き揚げる18~66歳の選手50人には、満面の笑みあり、感激の涙あり。「秋の甲子園」に達成感があふれた。

 本大会には、予選で優勝の単独チームがそのまま参加することが多い。だが、長野県高校野球OB連盟は「初回は選抜チーム」とこだわった。

 理由は、昨年1月に長野県青少年野球協議会が開いた第1回長野県ベースボールサミットにある。6年間で県内の小中高校生の野球人口が3割も減ったと発表され、衝撃が走った。

 「このままでは長野県の野球はつぶれてしまう。手を打たないと」。池口良明・現会長(松本深志OB会長)らが中心となり、OB連盟を設立した。基本テーマは「野球再生」。目標に向け、「多くの高校球児OBに立ち上がってもらう求心力に」と位置づけたのがマスターズ挑戦だ。そのため、県予選参加の全25チームから選手を派遣してもらう選抜方式を採用した。

 「聖地」体験を各地に還元してほしいという願いは実現しつつある。「マスターズ甲子園1期生」の間で、すでにメールやLINE(ライン)のやり取りが盛んだ。「特別な球場」「皆、18歳に戻った」「野球の原点『楽しくプレー』を再確認」「あの感動を野球界のために役立てる」。持ち帰った土を母校グラウンドにまいたチームも複数ある。

 元球児への期待は、例えば、指導面での貢献。学校の部活動は先生たちの働き方改革の推進に伴い、指導者不足が懸念される。それを野球経験者が補うのは現実的な取り組みといえる。

 10月、県選抜チームの壮行試合(松本市野球場)で対戦相手にOB連盟が招いたのが全日本女子野球連盟の関東選抜チームだ。「野球をやりたい女子に道を開く契機に」と発案し、女子選手による少女野球教室も開いた。受講者が受けた刺激は大きかったという。

 11月25日。長野オリンピックスタジアムでの「北信野球の日」。ユニホーム姿の2人の女子中学生が話を弾ませていた。

 ともに2年生で軟式野球部員の長瀬莉乃(りの)さん(飯山市)と市川和花奈(わかな)さん(長野市)。初対面で意気投合した。兄の影響で野球を始め、女子部員が同学年で1人なのも一緒。共通の関心事は「高校に進学後も野球をやりたい」。しかし、県内の高校に女子野球部は存在しない。

 2人があこがれる選手は、この日「侍ジャパン」のユニホームで特別参加した、長野市出身で京都両洋高校3年の坂原愛海(あみ)さんだ。「県内に女子野球部があれば、進学していた」という。今夏、同校エースとして女子高校野球(硬式)の全国大会で初優勝。日本代表に選ばれてワールドカップ6連覇に貢献し、来春は女子プロ野球に進む。「野球、がんばって」と長瀬さんらを励ました。

 県青少年野球協議会は今年、女子普及委員会を発足させ、私立高校に女子野球部の創設を働きかける方針だ。最近では、男子選手限定の現在の高校野球に女子選手の参加も認めてほしいという混合化の動きよりも、女子高校野球の確立機運が目立つ。全国のチーム数も27校に増え、「第2の坂原」が育つ環境が整いつつある。

 マスターズと女子野球。この競技を未来につなぐ新しい風が吹き始めている。(山田雄一)

 ■県高校野球OB連盟加盟の41チーム

 飯山、長野吉田、長野、長野商、長野工、篠ノ井、松代、長野日大、上田、小諸商、岩村田、佐久長聖、岡谷南、岡谷工、赤穂、駒ケ根工、飯田、塩尻志学館、松本工、松本県ケ丘、松本美須々ケ丘、松本深志、穂高商、大町岳陽、松商学園(以上、第1回県予選に参加した25チーム)

 下高井農林、中野立志館、須坂、北部、長野東、屋代、上田千曲、上田東、丸子修学館、上田西、伊那北、下伊那農、東海大諏訪、松本蟻ケ崎、南安曇農、東京都市大塩尻(以上、第1回県予選には不参加だった16チーム)