メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

強豪から逃げない、「逆転」には夢がある 内館牧子さん

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • メール

2018年8月11日13時24分

 ■甲子園観戦記 脚本家・内館牧子さん

 都立高から校歌の作詞を頼まれたことがあるの。すぐに引き受けた。私の作った歌が甲子園で流れたら最高だもの。ここには初めて来たけど、扇状のグラウンドが本当にきれいね。

 意外かもしれないけど、昔の勤め先(三菱重工横浜製作所)で、野球部のマネジャーをしていました。上司が野球部長で、女子マネジャーがほしいって。相撲やプロレス以外のスポーツは知らなかったのに。なかば業務命令ですけど、野球に情がわいてきた。担当していた社内報に、2―11で大敗した試合を「三菱横浜、惜敗」って書いて止められたっけ。高校野球を見るようになったのもこのころ。

 2010年にTBSのドラマ「塀の中の中学校」の脚本を手がけました。義務教育を終えていない受刑者が少年刑務所にある中学校で学ぶ話ですが、卒業式の場面で全国高校野球選手権の大会歌「栄冠は君に輝く」を使ったんです。元気が出るし、さあ社会に出るぞという気持ちになれる。何より、誰に習うでもなく、いつのまにか心に刻まれている曲。思いついた瞬間、「勝った」と思ったわ。テレビ番組の国際コンクールで最高賞をいただきました。

 折尾愛真が日大三にリードを広げられていく。でも、選手の表情に弱気は見えない。

 総監督をしている東北大相撲部では、強豪が相手でも「逃げるな」と言います。立ち合いの変化はだめ。社会に出たら自分を、家族を守るために逃げなきゃいけない時もある。でも学生のうちは逃げないでほしい。折尾愛真の斉藤君が八回にホームランを打った。「なめんなよ」って聞こえてきそうじゃない。

 「逆転」っていう言葉には夢があると思います。

 私は大相撲の横綱審議委員会の委員をしていたころ、横綱朝青龍とよくケンカしたけど、幼稚園のころは社交的じゃなくていじめられていたの。いつも助けてくれるのが力道山みたいに体の大きな男の子で、そこから相撲が好きになったんだけど、当時を考えれば、こんなに人前に出る仕事をしているなんて思いもしなかった。28歳のとき、たまたま新聞広告にあったシナリオライターの養成所に通って、脚本家デビューは40歳ですから。小学校の作文を母に書いてもらっていた私が。人生、どう転ぶか分からない。

 折尾愛真は、日大三との試合で逆転できなかった。同世代にすごい強いやつらがいることを知ったでしょう。地域の方に応援してもらっていることも分かったでしょう。すべてを力にして、次のチャンスに備えて。人生で逆転する要素になるわよ。(構成・鈴木健輔)

     ◇

 うちだて・まきこ 1948年、秋田市出身。69歳。脚本家。代表作にNHK朝の連続テレビ小説「ひらり」、大河ドラマ「毛利元就」など。格闘技が大好きで、女性で初めて横綱審議委員会委員を経験した。