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野球部員が手塩「魔法の砂糖」で遠征費を 喜界島の挑戦

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2018年7月12日10時24分

 鹿児島市から約370キロ南に浮かぶ喜界島。島唯一の高校の野球部が今夏、インターネット上で出資を募るクラウドファンディング(CF)に挑戦している。目的は遠征費用で、返礼品は、部員たちが育てたサトウキビからつくった「魔法の砂糖」だ。

 県立喜界高校(生徒167人)の野球部員は15人。甲子園出場はないが、元広島の高橋英樹投手ら3人のプロ選手を生んでいる。

 野球部にとって遠征費は悩みの種だ。鹿児島市までフェリーで12時間かかる。往復で1万1千円、ホテル代は食事込みで1泊約6千円。大きな大会だと日程や天候次第でさらにかさむ。

 一部の公式戦では学校の補助が4割あるが、練習試合はすべて部員の負担。年3~4回の公式戦のほか、奄美大島や鹿児島市での練習試合も8回ほど行う。

 野球部は伝統的に、遠征費のために12~4月は町の製糖工場でバイトをする。製糖に使う機械を洗う仕事で、かなりの重労働だ。シフト制ではなく、工場がその日に足りない人員を部に伝え、その都度行く。「いつ、何人がバイトするかわからない。半分以上が行くと、まともな練習ができないこともある」と中迫友希部長(30)は言う。遠征費を理由に入部を諦める生徒もおり、2015年秋は連合チームで出場した。

 こうした状況を変えようと、OB会が「自分らで畑をつくり、その売り上げで遠征費を賄おう」と提案。普段の練習でも試合相手を担うOB会や島民のサポートを受けながら、部員たちは昨年6月、4千平方メートルの畑にサトウキビの苗を植え、今年5月に収穫した。

 定期的に草取りをし、雨が降る中でもレインコートを着て作業を続けた。基島大地君(3年)は「長靴に水が入ったり、土がくっついたりして、歩くのも大変だった」と振り返る。竹下耕大主将(3年)は「小さな苗が自分の背丈よりも大きくなって驚いた。家の手伝いをしている人はいるけれど、最初から最後まで栽培するのはみんな初めて」と話す。

 できあがった黒糖は袋詰めにされ、一人ひとりに手渡された。5月の大会では「支えてくれた人への感謝」として、試合前にみんなで食べた。不思議と力が湧いてきて「魔法の砂糖」と呼ばれるようになった。

 当初は販売しようとしていたが、OB会からCF案が出た。「島の子どもの努力や苦労に共感し、寄付してくれる人はきっといる」。そんな希望を託した。

 OBの夏目淳一さん(35)は「経済的な負担を理由に野球を諦める子が出ないように、安心して野球ができる環境を整えたい」。

 CFがうまくいけば、同部は今冬から製糖工場のアルバイトをやめる予定だ。鹿児島大会は7日に開幕。中迫部長は「決勝までの資金を集めたいが、ひとまずベスト4まで行く前提で部員からお金を集めている」と意気込む。

 12日に初戦を控えた竹下主将は、宿泊先の鹿児島市内のホテルで黒糖を口に含んで語った。「これを食べると色んな人に支えられていることを実感する。この応援をエネルギーに変え、がんばりたい」

 CFサイト(https://camp-fire.jp/projects/view/78018別ウインドウで開きます)から。(野崎智也、小瀬康太郎)