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山あいの高校野球部、最後の夏 成績残し「町の象徴」に

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2018年7月4日13時14分

 熊本・宮崎の県境に近い山あいの小さな学校の野球部が、この夏を最後に球場から姿を消す。県立多良木(たらぎ)高校(熊本県多良木町)。野球部を誇りにし、支えてきた地元の人たちにとっても「最後の夏」となる。

 多良木は、水上村、湯前町、多良木町の3町村で唯一の高校。来春の閉校が決まっている。多いときは千人ほどいたという在校生は今、3年生のみ67人になった。そのうち野球部員はマネジャーを含め24人いる。

 5月末、熊本市内の球場であった試合には、多良木町の住民ら46人がバスで2時間かけて応援に駆けつけた。おもに祖父母世代。家族でない人も多い。声をそろえて応援歌を歌うことはないが、ピンチでは必死に手を合わせて祈り、いいプレーに立ち上がって喜ぶ。

 普段から学校のグラウンドには家族やOB、町の人たちが差し入れを持ち寄る。マネジャーが書きとめる「差し入れ帳」には「スイカ2玉、トマトたくさん、ゼリー2袋、からあげ・たまごやき、ふりかけ7袋……」。6月は、27日までに38件あったという。

 多良木は監督の斎藤健二郎さん(69)が指揮をとった1978年以降、力をつけた。甲子園出場経験は春も夏もないが、夏は昨年まで6年連続で16強以上。斎藤さんは他校勤務を挟んで校長、監督として計22年間多良木に携わり、阪神などで投手として活躍した野田浩司さんや、今春の東京六大学で首位打者の中村浩人さん(法政大)を指導した。

 中村さんがいた2013年には秋の県大会で優勝。当時からあった閉校の話も「選抜に出たらなくなるのでは」と期待されたが、九州大会で敗れた。

 多良木町久米の児玉盛光さん(69)は「県立の弱小チームが私立の雄と戦う姿が、徳島の池田高校のさわやかイレブンに重なるのかな。コンスタントに成績を残してきたから野球部が町の象徴になったと思う」。

 学校近くでラーメン屋を営む宮本裕子さん(63)はチームが愛される理由に「町との一体感」を挙げる。部員は地域の催しに積極的に参加して設営を手伝う。駅前の公園を掃除する姿はすっかりおなじみだ。

 グラウンドの近くに住む佐波都代さん(70)は、犬の散歩中に部員が立ち止まってあいさつをしてくれる姿が「かわいい」。別の女性は自宅倉庫の瓦に何度も球が当たって割れているが、謝りに来た部員をとがめたことはない。「一生懸命やっているんだからいいの。元気をもらえるから。この子たちがいなくなってしまうのは寂しい」と話す。

 平野光主将は、入学当初はなぜボランティアをするのか疑問だったが、今はわかるという。「試合では応援の人数も多く、どのチームにも負けない応援をしてくれる。愛を感じます」

 1日に藤崎台県営野球場(熊本市)であった開会式で、選手宣誓を務めた平野主将。そこには、感謝の言葉を盛りこんだ。

 「おばあちゃんたちに甲子園に行ってよ、と言われる。プレッシャーもあるけど、勝って町の人たちに恩返ししたい気持ちの方が大きいです」。初戦は9日。(杉山歩)