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球場が親指の爪ほどに 甲子園に向けてボール投下訓練

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2018年7月3日14時00分

 今年で100回目を迎える全国高校野球選手権大会。阪神甲子園球場(兵庫県西宮市)である全国大会や多くの地方大会の開会式では、ヘリコプターから始球式に使うボールを投下する。風向きやタイミングを見計らって投じられたボールの「目線」は、どのようなものなのか。甲子園でも取り付ける小型カメラを使った訓練の様子を取材した。

 ボール投下は「祝賀飛行」といい、朝日新聞の社有ヘリが使われる。航空部に所属するパイロットや整備士らが担当。ふだんは事件や事故の現場に記者やカメラマンを運ぶが、祝賀飛行ではボールを運ぶ。

 100回大会に向けた6月、京都府八幡市のかわきた自然運動公園で訓練が行われた。宇治川の河川敷にあるグラウンドを始球式会場の球場に見立てた。

 ヘリは地上から150メートルほどの高度で、後部座席右側のスライドドアを開ける。空から見ると、グラウンドは親指の爪ほどの大きさにしか見えない。ボールを投下する目標は、二塁ベース後方に広げられた縦約1・4m、横約2mの旗だ。

 ヘリを操縦するパイロットが投下のタイミングを見定める。コックピットの風速計と、煙突から立ち上る煙などの風景から、風を読む。後部座席の整備士に「用意、投下」と指示を出す。

 合図と同時に、整備士は社旗がつながれたボールを地上に向かって投げる。今回、投下されたボールからの「目線」を確認するため、小型カメラも装着している。整備士の手を離れると、指示棒にくくり付けられた社旗が開いた。

 ボールはゆらゆらと風に流されながら、目標の旗から約1mの場所に落下。地上でボールの行方を見守っていた井手尾雅彦・航空部員(58)が、上空のヘリに向かって拍手を送った。

 井手尾部員によると、目標の3m以内にボールが落ちるのは3割程度の確率だという。ボール投下は全国各地の地方大会や甲子園で年間40回ほど行われるが、目標の上にボールが落ちるのは3年に一度あるかないか。過去の地方大会では、風に流されたボールが球場外に出てしまったこともあるという。

 また、旗のたたみ方や、投げ方が悪いと、社旗がうまく開かない。成功の秘訣(ひけつ)は、パイロットと整備士の「あうんの呼吸」だ。この日操縦を担当した上野博機長(47)は「ボールを投下する整備士にプレッシャーを与えないよう、一定速度で姿勢の変化が無いように飛ぶ。うまく行けば、スタンドから手を振ってくれる人の姿が見える。伝統の技で大会を盛り上げたい」と話している。

 6月23日開幕の沖縄大会から始まった地方大会では、球界の著名人による始球式や記念イベント「100回つなぐ始球式リレー」などが行われている。小型カメラを取り付けたボールは、8月5日に甲子園である祝賀飛行で「本番」を迎える予定だ。(高橋大作)