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球場の雰囲気変えた好守 土壇場で信じた自分の感覚

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2017年2月22日09時10分

 静岡県出身の市川幹人さん(22)から投稿が届いた。2008年夏、甲子園のバックネット裏から見た守備が忘れられないという。「今でも思い出すと、鳥肌が立ちます」

 第90回大会準々決勝、智弁和歌山―常葉菊川(静岡)。13―2まで常葉菊川がリードし、八、九回に智弁和歌山が反撃。4点ずつ奪って3点差、なお九回無死一塁の場面。アルプス席から伝統の応援曲「ジョックロック」が響く。一、二塁間へ、鋭い打球がとんだ。

 抜けた! そう思った打球を二塁手が後ろに倒れ込みながら捕った。間髪入れず二塁へ送球。併殺に仕上げ、常葉菊川が逃げ切った。「球場の雰囲気全体をグラブで吸い込むようなファインプレー」。市川さんは、そうつづる。

 演じたのは常葉菊川の町田友潤(ともひろ)さん(26)。数々の好守で、「甲子園史上最高のセカンド」とファンから評された。社会人のヤマハで現役を退き、現在は別の会社で働く町田さんは「相手の歓声が自分のプレーで、ため息になる。一瞬でがらっと雰囲気が変わるのは、正直、気持ちよかったですね」と懐かしむ。

 重圧はあった。名手の呼び声が広まり、打球が町田のところに飛べば、さばいてアウトにしてくれるという期待感を肌に感じながらプレーしていた。だから、ビッグプレー直後の当時の映像をみても、笑顔はない。「ほっとしたのが先だった」

 町田さんが土壇場で信じたのは、自分の感覚だった。「実は捕球した後、送球先の二塁ベースが見えていなかったんです」。練習で体に染みこませた動きだから、正確な送球ができたのだという。

 第78回大会決勝、松山商(愛媛)―熊本工の十回にあった「奇跡のバックホーム」、第92回大会1回戦の仙台育英(宮城)―開星(島根)での九回の攻防――。ファインプレーには、試合の行方を動かす力がある。

 楽天のオコエ瑠偉(19)も、関東一(東東京)の高3だった15年の第97回大会でみせた。中京大中京(愛知)との3回戦。一回2死満塁の場面で、左中間への大飛球を背走キャッチした。本人は、あっけらかんと振り返る。「背走して捕る練習はいつもしていました。僕からしたら、普通のプレーですよ」

 記憶に刻まれる守備ほど、日々の研鑽(けんさん)が支えている。(小俣勇貴)