朝日新聞デジタル

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2013年7月2日19時15分
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〈像 主将:1〉岩手 チーム引き締め 燃やす闘志

写真:打撃投手として黙々と投げ込む鈴木圭悟=盛岡北高グラウンド拡大打撃投手として黙々と投げ込む鈴木圭悟=盛岡北高グラウンド

写真:練習前、主将として指示を出す鈴木圭悟(左から3人目)=盛岡北高グラウンド拡大練習前、主将として指示を出す鈴木圭悟(左から3人目)=盛岡北高グラウンド

■盛岡北・鈴木圭悟君(3年) リーダー交代の非常時 指名された「3番手」

 6月中旬、盛岡北高グラウンド。主将の鈴木圭悟(3年)は西に傾いた日を浴びながら、打撃投手として黙々と投球を続けていた。投球練習場では、2年生でエースを務める太野大樹が捕手を座らせ、投げ込みに励む。

 田中純一監督は鈴木を「投手陣の中では、3番手」と評する。練習試合などでも、強豪相手や競った展開になるとマウンドに立つ機会はほとんどない。

 昨年のチーム発足時、主将に指名されたのは鈴木の同級生、柴田恵佑(3年)だった。4番打者で打線の要でもあった柴田に昨年11月、思わぬ事態が起こる。練習中、ひざの靱帯(じんたい)と半月板を傷め、長期の戦線離脱を余儀なくされた。

 「試合に出られるまで半年」と診断され、田中監督は主将交代を決断。3年生に話し合いを指示した。「主将が練習の場に立てないと、チームが一つの方向を向くのは難しい」

 3年生の間では、副主将を据えて乗り切る案や、下級生から抜擢(ばってき)する案も出た。だが、最終的に「責任感が最も強い」と鈴木を立てることで一致した。

 「気持ちを前面に出して、一生懸命練習する子。1年生の時も学年リーダーだったし、柴田でなければ鈴木だと思っていた」と監督も納得の結論だった。

 監督には、選手たちとは別の思いもあった。

 鈴木は1年生の秋、地区大会を1人で投げきり、チームを県大会に導いた。将来のエースとして期待された。ところがその後は伸び悩む。昨秋の地区大会は制球が定まらず、四死球を出してカウントを取りにいった球を打ち込まれるなどして県大会を逃した。

 「主将になって成長するかもしれない。非常事態の中での変化に期待した」と田中監督は振り返る。

 人当たりが柔らかい柴田とは違い、鈴木は練習中のミスにも厳しい言葉をかけ、鼓舞した。そんな態度がチームの空気を引き締めた。

 退院して久しぶりにチームを見た柴田はその変化に驚く。「一丸となって『主将についていこう』との雰囲気が出ていた。前主将としては悔しいけれど、チームにとっては良いこと」

 チームは今春、地区大会を突破して県大会の2回戦まで駒を進めた。ただ、この時も鈴木の背番号は10。冬に成長した2年生と入学したばかりの1年生がマウンドを守り、鈴木に登板機会はなかった。

 鈴木は言う。「選手としては『投げたい』という気持ちはある。でも、主将としては勝てる投手が登板するのは当たり前」

 だが、諦めてはいない。「何があるかわからない。思わぬ場面で登板があるかもしれない。最後までアピールする。『お前が投げたから勝った』と言わせたい」。強い意気込みで、チームを引っ張る。(敬称略)

     ◇     

 チームの数だけ主将がいる。ただ一人、周りと違う働きも求められる。そんな彼らの心の中を追った。(松本龍三郎が担当します)

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