朝日新聞デジタル

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2013年6月30日18時8分
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〈いっしょに校歌を歌いたい:1〉栃木 勝利校長先生に

写真:野球部から贈られた色紙とボール。鶴見校長は、思いを語りながら涙をこぼしたが、写真を撮る時には、「泣いているとみっともない」と表情を引き締めた=佐野市の佐野東高校拡大野球部から贈られた色紙とボール。鶴見校長は、思いを語りながら涙をこぼしたが、写真を撮る時には、「泣いているとみっともない」と表情を引き締めた=佐野市の佐野東高校

写真:練習を終え、グラウンドに向かってあいさつする望月主将(右端)ら=佐野市拡大練習を終え、グラウンドに向かってあいさつする望月主将(右端)ら=佐野市

■創部3年目の佐野東 常に応援してくれた恩返しを

 2年前、佐野女子の男女共学化に伴って開校した佐野東。創部3年目の野球部にとって今年の夏は特別な思いがこもる。

 2年前、創部とともに入部したのは望月裕葵(ゆうき)主将らちょうど9人。用具も十分ではなく、練習も自転車で30分以上離れた旧田沼高校のグラウンドを借りていた。しかし、9人はひとりも欠けることなく最上級生となり、今年は念願のグラウンドも完成した。公式戦ではいまだ未勝利。最後の夏に結果を出すのがチーム全員の目標だ。

 ゼロから出発した部員たちが、初勝利を届けたいと願う相手が鶴見重人校長(56)だ。試合に何度敗れても、応援に来てくれた。「よく見ていてくれてるんだ」。部員たちはそう感じ、「まじめで堅そうだけど、内面は熱い」と信頼を寄せる。野球部だけではなく、週末のたびに生徒の課外活動を見て回るとも聞いた。

 昨年秋、その鶴見校長が脳出血で突然、倒れた。入院して治療を受けたが、左半身にまひが残り、リハビリを続けている。

 今年3月、卒業式で久しぶりに学校に姿を見せた鶴見校長に、望月主将は励みになればとボールを手渡した。ボールは使い込まれてぼろぼろ。そこへ「頑張れ!」と書いた。

 受け取った鶴見校長は、「『頑張って下さい』じゃなくて、『頑張れ』。気持ちがこもっている気がするんです」。土色になった白球だが、妻の久代さんは「肌身離さず持っているんです」と笑う。

 佐野東の初戦は7月16日。相手はシード校の白鴎大足利だ。昨年春の地区予選では7回コールド負け。一本も安打を打てずに敗れた。

 鶴見校長の意志の源は、生徒への思いだ。「応援に行こうと思えば、リハビリを頑張れる」。入院中、見舞いに訪れた部員からは「元気になって球場で応援してほしい」と声をかけられた。

 望月主将は、校長の思いに応えるように話す。「公式戦で勝って、校長先生と一緒に校歌を歌いたい」

     ◇

 第95回全国高校野球選手権記念栃木大会が7月13日に開幕する。球児たちの胸には、これまで支えてくれた多くの人たちの思いが宿る。そんなエピソードを紹介します。(友田雄大が担当します)

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