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2013年7月8日18時17分
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〈こだわりあり:1〉富山 本塁狙いは瞬時の判断

写真:走者に指示を出す入江黎君=富山市東石金町の不二越工業拡大走者に指示を出す入江黎君=富山市東石金町の不二越工業

■三塁コーチ 不二越工・入江黎君

 【竹田和博】日が傾きかけた不二越工業のグラウンド。外野に飛んだ打球を見て二塁走者が走り出した。地面にバウンドした打球を捕った外野手が素早く本塁への返球態勢に入る。守備を置いた実践的な走塁練習だ。

 「回れ!」

 三塁に向かってくる走者に、三塁コーチの入江黎(れい)(2年)の大きな声が飛んだ。ぐるぐると大きく腕を回す。目の前を走り去った選手が、滑り込んでホームインするのを真剣なまなざしで見つめた。

     ◇

 入江が三塁コーチになったのは昨秋。監督の陸田俊行の指示だった。三塁コーチには瞬時の判断が求められる。走者を本塁に返すのか、それとも止めるのか。その判断が勝敗を分けることもある。陸田は「4番打者より大事」と言う役割を、入部時から元気で集中力のあった入江に任せた。

 入江の「本職」は外野手。当初は「試合準備ができず出番が減りそうだ」と戸惑った。だが、続けるうちに「走者やコーチの狙い、視点が分かる。外野守備にも生かせる」と面白さが分かってきたという。

 三塁コーチとしての仕事は試合前から始まっている。相手の守備練習を観察し、捕球の仕方や内外野の連係、外野手や中継プレーに入る内野手の肩の強さを頭に入れる。試合中は、投手や捕手の牽制(けんせい)に気をつけるよう走者に指示も出す。

 腕の見せどころは、走ってくる選手への指示だ。微妙なタイミングでは基本的に「本塁を狙わせる」。相手守備がミスをしてセーフになる可能性があるからだ。野手の動きを見ながら「ギリギリまで本塁を狙わせ、危ない時は走者がベースを踏んで自分の前を通り過ぎるまでの間で止める」と入江。大きな身ぶりで指示するよう心がける。

 主将の深川駿太(3年)は「体全体を使って思い切り回してくれるので不安無く走れる」。仲間からの信頼も厚い。

     ◇

 入江は北九州市出身。九州の高校で野球を続けるつもりだったが、中学時代のチームメートで「気が合う」、矢部雄太(2年)が不二越工業に入ると聞き、気持ちが揺れた。迷った末、中学3年の8月に富山行きを決めた。「なじめるかという不安よりも、やってやろうという気持ちの方が強かった」

 当然、三塁コーチだけで終わるつもりはない。今夏は背番号7をつける。「選手で出ても可能な時はベースコーチを任せる」と陸田は言う。

 「試合でも活躍したいし、あいつが回してアウトなら仕方ないと言ってもらえるようにコーチとしてもしっかりやりたい」と入江。今年の夏は少し忙しくなりそうだ。(敬称略)

     ◇

 第95回全国高校野球選手権記念富山大会が11日に開幕する。チームでの役割や打法、球種など「こだわり」をもって取り組む球児たちを5回にわたって紹介する。(この連載は竹田和博が担当します)

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