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広陵、一瞬で消えた夢 それでも試合に「ありがとう」

2010年08月14日

 誰も「聖地」の土を持ち帰らなかった。拾うことすら忘れるほど、あっけにとられた敗戦だった。

写真広陵―聖光学院 7回裏、聖光学院に先制を許し、帽子を取って汗をぬぐう広陵の投手有原=12日、竹花徹朗撮影
写真甲子園を後にする広陵の選手たち。土は持ち帰らなかった=12日、中里友紀撮影

 甲子園で日本一を目指した広陵は12日、聖光学院(福島)に0―1で敗れた。創部100年目を初の選手権制覇で飾る夢は、阻まれた。

 「全然試合のこと覚えてないです」。いつもはクールな豊田貴光(たかみつ)君(3年)が控室の一角で、目を真っ赤にしていた。「あっという間に9回になってて……」。ベンチから戦況を見つめた二宮佑介君(同)も口をそろえた。

 広陵の大黒柱・有原航平君(同)と相手投手の投げ合い。有原君の投球数は99球。両チーム無失策で、試合時間はわずか1時間48分だった。

 7回裏2死二、三塁の場面。有原君が、相手の7番打者に投じた第6球だった。渾身(こんしん)の直球は空振りを誘ったが、ワンバウンドでバックネットにぶつかった。重い、重い失点だった。「1点を争うゲームで、改めて1球の怖さを、野球の厳しさを知った」と中井哲之監督。“魔物がすむ”甲子園で、「一瞬」にのみ込まれた。

 試合後の宿舎。食事を済ませた選手らは、駐車場で、スパイクやグラブの手入れをしていた。いつもと変わらぬ風景だ。「本当に負けたんかな……」。「まだ明日、試合するみたいやな」。みな早々と部屋に引きあげた。

 夜8時過ぎ。いつもはまだ数人がバットを振っているはずの駐車場に、人影はなかった。そこに、三塁手の徳田真優(しんゆう)君(同)が現れた。バットをバスのトランクから取り出し、黙々と振り始めた。「今日で引退する気なんてしないっすよ」。寂しげに笑みを浮かべた。「でも、甲子園で高校野球を終われるだけで、ありがたい」。苦い思い出が残った試合に感謝した。

 「ありがとう、日本一」

 広陵のグラウンドのセンター後方に掲げられた横断幕。選手たちはアルプス席から応援してくれた仲間や宿舎のスタッフ、誰にでも「ありがとう」の言葉を忘れない。試合には負けたが、「感謝」を大事にする日本一のチーム。その姿に心を洗われた。13日朝、広島に向けて出発する広陵のバスに頭を下げ、見送った。「ありがとう。来年こそ日本一を」と願いながら。(小俣勇貴)


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